7話 聖剣を抜く
王都までの道のりはまだまだ長かった。
ルードは宿場町を出て、王都へと続く道を歩く。
王都までの道はゴウロ山脈の麓に通っていた。
右側には山脈、左側には平原が広がっていた。
ルードはその道を歩きながら山脈を見上げていた。
「高いなぁ」
山脈を見上げながら呟く。
「そうだよな」
反対側から来ていた馬車に乗っているおじさんが話しかけて来た。
「こんにちは」
ルードは立ち止まって挨拶をした。
「おぉ、こんにちは。坊主はどこから来たんだ」
おじさんは挨拶を返して、ルードに質問をする。
「えっと…僕は山脈の向こう側の方なんですけど…そういえば、自分が育った町の名前知らなかった」
ルードは質問に答えた結果、ものすごく焦っていた。
「坊主、この国では結構普通だから気にすんなって…出身の国は覚えていても街まで覚えてる奴は少ないから」
おじさんはルードを落ち着かせるように言った。
少し経って、ルードは落ち着きを取り戻す。
「すみません、取り乱して…」
ルードはおじさんに軽く頭を下げて謝った。
「おいおい、いちいち気にすんなって…悪いと思うんだったら何か買っていってくれ。これでも商人だからな」
おじさんはルードの肩を叩きながら言った。
「わかりました…食料はありますか?」
「おぉ、食料は干し肉と果物があるぞ」
おじさんはルードにそれらを見せながら言った。
「では、干し肉を10切れほどください」
「はいよ、銅貨3枚で1切れだから、銅貨30枚か、銀貨3枚だよ」
おじさんは小さめの皮袋に干し肉を詰めながら言った。
「それでしたら銀貨3枚でお願いします」
ルードはそう言って銀貨3枚を鞄から取り出した。
「よし、ちょうど3枚だな。おまけで2切れ入れといたからな」
おじさんはそう言って、干し肉の入った袋をルードに渡した。
「ありがとうございます」
「いいってことよ。坊主、いい旅を」
おじさんはルードのお礼を聞くと馬車を走らせてその場を去っていった。
ルードはそんな出会いもあり、軽快に進んでいた。
そんな時、遠くから声が聞こえた。
「誰か、俺と勝負する奴はいないか。俺に勝てば俺の持っている金を全部やろう。その代わり俺が勝ったら銀貨5枚をもらう」
ルードはその声の主が気になって、少し小走りで声のする方へと進んだ。
声がするところにはちょっとした人集りができていた。
「じゃあ、俺と勝負してくれよ」
1人の男が人集りの前に出て言った。
「おぉ、1人目の挑戦者か。よし、来い!」
2人の男は剣を構える。
観客の「いけー!」の声と共に挑戦者は一直線に走り出す。
挑戦者は剣を振り上げて切り掛かる。
それを見て、男も剣を振り上げる。
勝負は一瞬だった。
挑戦者が振り下ろした剣を男が受け流す。
それによって挑戦者が体制を崩す。
挑戦者は体制を直そうとしたところに男が足を引っ掛ける。
挑戦者はそのまま転けて、男は挑戦者の首に剣を突き立てた。
観客はその状況を見て、静かになってしまった。
「……もう終わりかよ」
そんな中、観客の1人が呟いた。
その声に同調するように「ほんとだよ」「もう終わったのかよ」などという言葉がその場に響いた。
「残念だったな」
男は挑戦者にそう言って、手を差し出した。
「クソッ…」
挑戦者はそう呟いて、差し出された手に掴まり立ち上がった。
そうして、挑戦者はその場を立ち去ろうとした。
「おい、負けたんだから銀貨5枚おいてけ」
男は立ち去ろうとする挑戦者に手を差し出しながら言う。
「あ〜はいはい」
挑戦者はそう呟きながら銀貨5枚を男の方に雑に投げた。
男はその銀貨を拾い上げ、「次の挑戦者はいないか」と声を上げた。
その言葉を聞いた観客たちは「いやぁ〜」などと言って誰も挑戦しようとしなかった。
ルードはそんな中、観客たちの前へと出た。
「次、やらせてもらっていい?」
ルードは男に尋ねる。
「おぉ、いいぞ。負けたら銀貨5枚、もらうからな」
男はルードの言葉にそう返して、戦う準備をした。
「あぁ、わかってるよ。そっちこそ負けたら全財産くれるんだろ」
そう言ってルードも戦う準備をしようとした。
そんな時、ルードは迷っていた。
(鉄剣と聖剣、どっち使おう?)
ルードは少し考えていた。
「おい、どうした。怖気付いたのか」
男は立ち止まっていたルードに言った。
「いや、どっちの剣を使おうか迷ってただけだ。でも、今決めた」
そうしてルードは火の聖剣を抜いた。
「僕の名前はルード。君は?」
ルードは戦う前に男の名前を聞いた。
「ふん、俺の名はバルト。行くぞ、ルード」
バルトのその言葉と共にルードは踏み込んだ。
ルードは聖剣を左側から横一線に振る。
バルトは踏み込むルードに対してその場で剣を振り上げる。
次の瞬間、ルードの振った聖剣とバルトが振り下ろした剣が衝突する。
2人は衝突した剣が弾かれると思っていた。
だが、結果は違っていた。
バルトの剣がルードの聖剣によって、2つになった。
「…は?」
それを見たバルトは一瞬、止まった。
ルードはその隙を見逃さず、バルトの首に剣を突き立てる。
そうして、勝負はルードが勝利を収めた。