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拝啓―消えた勇者様へ  作者: 湯辺小豆
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今のところ良い出会い

先週の木曜日ぶりの投稿です。今回が二度目の投稿ですね。拙い文章ですが、読んで下さると嬉しいです!

 私は勢いよく、男の前に飛び出した。 


 いきなり目の前に出てきた獣のような女魔族を見て、男は非常に驚いたらしい。剣を抜こうとしている。 


 あ、やばい。これ殺されるやつだ。


 瞬時に逃げようとしたが、 本能には逆らえないらしい。そのまま、男の前に突進してしまう。 


 あーもう駄目だぁ… 最後がこんな間抜けだなんて最悪だ…。死んだ姉さんに顔向けできないやー…あーー…



 この世の無常を哀れんでいたその時、男は何を思ったのか、剣を引っ込めて代わりにある物を差し出す。

 それは、なんか丸っこくて、ふかふかしていて、白くてほんの少し甘い匂いがするもの… でも肉の匂いもするような…?


 でもとにかくこれは…食べ物…!

  

 私はその丸っこいものにがっついた。そして、有り難くパクパクと食った。

 旨い…、すごく旨い…!肉汁がじゅわっと溢れ出て、口の中に肉の旨味がじわわ〜と広がっていく感じがはっきりと分かる…!あと皮もほんのちょっぴり甘くて、柔らかくて、肉にも合っている!なんだこれ、最強の食べものじゃん!ほっぺがホントに落ちそうー!

 「うまぁぁぁい…!」

 私は先程の食レポを丸っこいものと一緒に呑み込み、代わりに端的な感想を述べる。


 すると、男はクスリと笑って、

 「それ、東の国では結構有名な食べ物で、”肉まん"っていうらしいよ。」と言う。 


 へぇ…肉まん…


 私は、その可愛らしい名前にキュンとして

 「なんか可愛い名前だね。」と、さっきまで、剣を向けられそうだったことを忘れて、普通に会話してしまう。


 いや、ちょっと待て。これ、下手したら食べ物と見せかけて、毒とかじゃないよな。だって私魔族だし、この人たぶん人間でしょ?毒を盛って私のこと倒そうとしている可能性だってあり得る。十分にあり得る。

 私は今更ながら、自分の体のあちこちを確認する。


 すると、男はそれに気づいたのか、

「毒なんて盛ってないよ。俺は仮にも勇者だ。そんな残酷なことをするわけ無いだろ。」と言う。

 確かに体に異常は起こっていない。後で効果を示す毒じゃないと考えるなら、この男の言う通りかも…。


 ん?ちょい待って。今勇者って言った?

 

 私はズザザーっと後退りし、肩にかけてあった弓を手に取る。獣耳がピーンと張っている。

 「勇者は、半世紀以上前に最後の代が死んだって聞いたよ。魔王の勢力も段々と衰えていったから、そこから勇者は一人たりとも現れていないはずだけど。」

 私はその勇者らしき男に疑いの目を向ける。


 すると男は驚いたような顔をした。


 「大分詳しいんだね。確かに勇者は最近ずっと現れていないけど、ここ最近、不自然な出来事が何回も起こっているから、あちこちで勇者がまた現れているらしいよ。」


 あちこちで勇者が?それじゃ、この前来た不審者たちも勇者パーティーだったのかもな。弓で追い払ったけど。大丈夫、怪我はあんまりさせてないはず。だけど、不自然な出来事とは?勇者に尋ねてみる。

 

 「不自然な出来事?」


 「そう。あにこちの人や集落が、キラキラとした粒子になって、消える。その様はホントに美しいらしい…。」


 勇者はなんとも言えない顔をしている。


 「消える…。」いろんな疑問が頭に浮かぶ。


 「っていうような出来事が何回も起こっているから、あちこちの国で勇者を出しているらしいよ。原因を突き詰めて、この出来事の謎を解明するようにって。なんでも魔族が関わっている可能性があるからとか…。」


 「ふーん…。その話を、私みたいな魔族に話していいのかね?」


 勇者は、あっ!っていう顔をしている。


 私は更に疑問を突きつける。

「というか…そしたら何で私に肉まんとかあげたの?私みたいな魔族とか、倒したほうが良かったのでは?なんなら私、最初あなたのこと食おうとしてたし…」


 勇者はキョトンとした顔をしている。スゲェ表情豊かだな。

 

 そしたら、ニコッと笑って

「君に悪意は一切見えなかったからね。お腹が空いているだけなら、食べ物を分けてあげればいいだけの話。人間も、極限状態のときは他の人のことを襲うし。」  

 と、勇者としてアリなのか、ナシなのかよく分からないことを言う。

 「ふーん…。魔族にも食べ物を分けてあげるだなんて、変わった人だね。」


 そう言うと、勇者は少し寂しそうな顔をした…ような気がする。そういえばこの人、雰囲気が姉さんに似てる気がするな。


 そう思ったら、なんだかこの勇者に凄い親しみが湧いてきた。会話を続ける。


「そういえば、何でこんな森の中にいるの?ここらへんには、ほとんど何もないよ。」

「あー…、父親の墓がちょうどこの辺にあってね…。手紙を供えに来たんだ。」

「手紙?」

「そう。手紙を書くとね、なんかまだその人と繋がっている気がするんだ。大切な人とはずっと繋がっていたいものだから。」

「…へぇ。」


 そうやってしばらく会話を続けた。半年近くずっと一人だったから、寂しさもあったのかもしれない。でも、肉まんを渡された時点で、そそくさと帰れば良かったのかもしれない。あんな、悲しい思いを、連続でしたくはなかったから。


 


 









 

 



 


 

 

 


 

 








次回に続きます。読んでくださり、ありがとうごさいました!よろしければ、感想や評価などもお願いします。

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