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物語調の詩/短編

旅人と黒と靴

作者: 日浦海里

昨夜はひどい雨だった


山肌を吹き上げる風は強く

天幕ははためき

眠りは浅い


雲の谷間から昇る朝日だけが

私の気分を盛り上げてくれる


食事を終えて

天幕を畳み

ザックに乗せて

紐で縛る


足元にはいつからかの道連れ

小さな黒いナイトが一匹


視線の先にはのこぎりの歯のような

険しい尾根が延々と並ぶ


編み上げたばかりの肩から下げた籠が

今日の相棒の居場所だった


支度を終えて一歩を踏み出す


昨日の雨が嘘のように

今朝は見渡す限りの青


けれど、道はぬかるみ足場は悪い


不意に足裏に冷たさを感じる

見れば靴底が擦り切れていた


岩場に腰掛け靴を脱ぐ

相棒も一服と岩の上


こいつとの付き合いは相棒より長い

いくつの山越え

いくつの国越え

苦楽を共にした仲間


薄皮縫い付け処置を施す


あと数日は頑張ってくれ


念じる私に

相棒が、なぁ、と一声


旅路の果てに何があるのか


見届けてくれよ

ね、相棒

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― 新着の感想 ―
[良い点]  荒れた状況にも寂寥感はなく。ただ行くべきものとして。  頼もしい相棒と、ともに歩いた靴も。  立派な道連れですね。  言葉は少なくとも伝わる景色。  山の景色は流石だな、と思います。…
[良い点] 険しい山や厳しい自然が織りなす景色の中、力強く進む空気感がとても好きですーっ。 相棒…、トカゲさんかと思っていたのですが、にゃんこ? それとも「なぁ」と聞こえたのは主人公の解釈…? 敢えて…
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