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5.ユーリくん、花を買う

 確かに、ユーリくんも戦うことにためらいが無い人ではありますけど。


「自分が候補者の家族で若い男とかは、味方をする。子分とかも」

「家族はわかりますけど、子分ですかー。普段からそうやって、若いワーウルフは一緒に行動するのですか?」

「うん。徒党を組むっていうかな。そんな大人数なわけでもないけど」

「多いグループはどれくらいですか?」

「十数人」

「多いですね。その規模の集団がふたつ、真正面からぶつかったら、もう合戦ですよ」

「確かに。里の、女子供と老人以外の、働ける男はほとんど参加するから。……女も何人か。それなりの人数」


 でしょうね。血気盛んな女性ワーウルフも大勢いるでしょう。ワーウルフではないですが、女性の戦士は旅の中で何人も見てきました。

 今更そんなことで驚きはしません。呆れているだけです。


「ユーリくんくらいの年齢の子供は、どうなんですか?」

「僕くらいになると、参加するよ。父や兄を首長にするために頑張る」

「思いっきり、子供も参加してますよね」


 確かにユーリくんが味方だったら心強いとは思いますけど。


 まさか。


「ユーリくん。故郷に戻る理由って、まさか戦いに参加するためなんじゃ……」

「違う。参加しない。首長に興味はない。時期が重なったのは、たまたま」

「ならいいんですけど……」


 ユーリくんはこれから先も、わたしたちと旅をするのです。故郷で偉くなってもらっても困ります。

 そうじゃなくても、そんな血なまぐさい行事に巻き込まれないで、かなり安心しました。


「絶対に、戦いなんかしないでくださいね。ユーリくんが怪我をするところなんか見たくないので」

「うん。わかった」


 あまり表情を変えずに返事をしましたが、わたしにはわかります。これは本気で約束してる時の顔です。



 翌朝、いい天気です。


 いよいよ里に出発するわけですが、その前にユーリくんが村のお店に寄りました。

 ワーウルフが里の仲間にお土産を買っていくお店で、いろんなものが売られています。


 昨日の宿屋の主人もそうでしたけど、お店の人もワーウルフが村にあまり来なくなったことを心配していました。なにがあったのでしょうね。


 それはそうと、ユーリくんはお土産を選びました。親しい人に送るのでしょうか。この手の気遣いをする男の子とはちょっと違うかなと思ってたので、意外でした。

 しかも彼が選んだ物も意外でした。色とりどりの花を買って、花束にしてもらっていました。


 おかしいです。どう考えてもユーリくんの趣味ではありません。人に花を贈るとか、そんな趣味を持つような子じゃありません。

 つまり、贈る相手の趣味ということです。それも、ユーリくんが相手の趣味をよく知っているからできるのでしょう。


 そして花を贈る相手なんて、相手が女性としか考えられません。まさか、まさか。


「ゆ、ユーリくん。この花を贈るのは、女の人なのですか!?」

「うん。そう」

「ひゃー!」


 この子は! わたしというものがありながら!


「お母さんが、好きだった花。お墓に供えるの」

「あ……」


 そ、そうでしたか! なんだ、そういうことでしたか!


 びっくりしたけど、大丈夫です。別にわたし、動揺なんかしてません!


 お母さんですね。そうですよね。ユーリくんにもお母さんくらいいますよね!


 ……お墓ということは、亡くなっているのでしょうか。


「僕を産んで、それで亡くなったって聞いている」

「そうなんですか」


 思えばわたし、ユーリくんの家族についても知りませんでした。お母さんいなかったんですね。それで、こんな物静かな性格なのでしょうか。


「今まで、寂しかったですよね」

「?」


 ユーリくんの体をぎゅっと抱きしめました。わたしはユーリくんのお母さんの代わりにはなれません。けど、寂しさを紛らわせるくらいはできるはずです。


「フィアナ、苦しい」

「あ、ごめんなさい」

「この花、持ってて」

「はい……」


 抱きしめられても、あんまり嬉しくはなかったようです。花束を渡されました。


 ユーリくんは外に出ると、里に続く道へと向かいます。わたしの目には深い森にしか見えませんが、道があるようです。

 ワーウルフが日常的に通っているなら、道ができてもいいと思うんですよね。たとえ獣道でも、見てわかる道があるはずです。けど、ありません。


 村の敷地と、木が鬱蒼と生えている境目しか見えません。


「しっかり掴まってて」


 服を脱ぎながらユーリくんが言います。狼に変身したら人間の言葉を話せなくなるので、今のうちに言ってくれます。


 人間の姿の時に羽織っているローブを受け取り、わたしが代わりに羽織ります。服はかさばりますしね。

 それから背負った弓と、腰の筒に入った矢が、しっかり固定されているかを確認します。山の中で落としたら大変なので。


 弓と矢はこうやって装備するのが狩人スタイルです。たぶん弓矢を扱う兵士の皆さんも同じだと思いますけど。

 わたしの弓は子供の腕でも扱えるように小さいので、背負いやすいのが利点です。


 裸のユーリくんのたくましい背中が見えましたけど、すぐにそれが変化していきます。体が膨れていき、真っ白な毛が生えてきます。足が太くなって、狼のものに変わっていきます。


 すぐにユーリくんは、大きくて真っ白な狼になってしまいました。これがワーウルフです。

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