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2.ふたり旅

 カイさんが故郷へ顔を出したい理由は個人的なものですし、みんなの手を煩わせたくない気持ちもありそうでした。


 問題はリゼさんです。この人に目的なんかありません。ないわけではないですが、目的はこれまでの旅の中で叶ってしまいましたから。なので、コータさんと一緒に誰かについて行くしか能がありません。バカなので。


 あろうことか、ユーリくんと一緒に故郷、ワーウルフの里に行きたいと申し出たではありませんか。しかも、ワーウルフをモフモフしたいという不純な目的を口走りました。

 そんな邪悪で個人的な願望で、ユーリくんとのわたしのふたり旅を邪魔されてはかないません。


 全力でリゼさんのお尻をバシバシ叩き、なんとかカイさんと同行させることに同意させました。

 リゼさんが、ものわかりが良くてよかったです。必死の説得のおかげですね。


 こうして、ユーリくんとのふたり旅が実現しました。それぞれ用事を済ませると、決められた街に向かって合流という予定です。

 ワーウルフの里は山奥にあるので、その途中にある森で、野宿の準備中というわけです。



 さて、お話はこれくらいにして、夕食の準備をしないといけませんね。


 ウサギの首を切って逆さに吊るして、血を抜きます。そして皮も剥いでいきます。

 ウサギの毛皮もきちんと保存すれば売れるのですけど、ここらでは珍しいものではないので高くはありません。加工する手間もかけられないので、もったいないですが捨ててしまいましょう。


 お腹を切り開いて内蔵を取り出します。腸のあたりは特に念入りに取り除きましょう。

 それから肉に下味をつけます。と言っても、塩をかけるだけなのですけど。旅人なので、そんなに凝った調味料は持っていません。大丈夫、素材の味を楽しめばいいのです。


「別に、生でもいいのに」


 ユーリくんがわたしを見ながらそっと言います。


 確かに狼になれるユーリくんにとっては、捕まえたウサギを皮や内蔵ごとバリバリ食べてもお腹を壊すことはないでしょう。

 わたしが調理にかける労力に気を遣ってくれているのです。さすがはユーリくんです。


 しかし、これは必要なことなのです。


「ユーリくんに、美味しいものを食べてほしいので!」

「……そう。わかった」


 これは納得してくれた返事です。ユーリくんはまた、火の番に戻りました。


 下処理をしたウサギを木の枝に刺して火で炙ります。時々回して、均一に熱が入るようにするのがコツです。

 しばらくすれば、ウサギの丸焼きの完成です。いい感じにできたはずです。大きい方をユーリくんにあげましょう。


「おいしい」


 一口食べたユーリくんは、そう言ってくれました。あとは無言で食べ続けています。

 そうです。この反応です。これが見たかったんです。人のために料理をする醍醐味ってやつです!


「フィアナは、料理がうまいね」

「そ、そうですか? えへへ、狩人なら、これくらいできて当然ですよ。えへへ……」

「……」


 まずいです。褒められたのが嬉しすぎて、わたし変な顔になってないでしょうか。もっと、かわいい顔を常にキープしなければ、ユーリくんに変な子だと思われてしまいます!


「明日は、ナランズビルの街に着く。その後、里の隣の村で一晩明かして、翌朝に里に行く」


 ユーリくんは気にした様子もなく、明日からの予定を教えてくれました。


「僕に乗っていけば、早い時間に村まで行ける。さすがに、その日のうちに里までは行けないけど。どうする?」

「いえ! ユーリくんの足を煩わせることはないです! 村から里は、どうしてもワーウルフの足じゃないと行けないんですよね? だったらそこまでは歩きます!」


 ユーリくんはワーウルフなので狼になれるのですが、かなり大型で三人ぐらいを背中に乗せて走ることができます。

 リゼさんたちとの旅でも、急ぐときは背中に乗せてもらいました。


 それに慣れてしまうと、リゼさんみたいに、乗せてほしいと駄々をこねるようになってしまいます。わたしはできる女なので、そんな情けないことはしません。


「わかった。じゃあ、歩こう。今夜は、もう寝ないとね」

「はい。見張りはどちらからしますか?」

「僕がやる」


 野宿ですから、野生の動物が襲ってくるかもしれません。それに野盗とかもいるかも。小さい子供だけで旅をしてると見ると、容赦なく襲ってくるでしょう。

 そのために、交代で起きて周りを警戒しないといけません。人数が多ければ楽なのですけれど、ふたりしかいないと大変ですね。ひとりが起きてひとりが寝ての繰り返しです。睡眠不足になってしまいます。


 まあ、ふたり旅だから仕方ないですね!


 カイさんと長くふたりで旅をしてきたユーリくんにとっては、慣れたことらしいです。ここもかっこいいですね。

 焚き火に温められながら眠りにつきます。夜中にユーリくんが起こしてくれて交代。その時は、ユーリくんの寝顔を独り占めできます! そんなことして良いんでしょうか。いいんです。ふたり旅ですから!


 もちろん、ちゃんと見張りはしますけどね!

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