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ワーウルフの里の騒動~無能魔女スピンオフ~  作者: そら・そらら


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12.家の大掃除

 さっきユーリくんが大切にお参りしていたお墓ですら、周りは雑草だらけだし墓石も汚れが目立ちます。


 お母さんとお話しする大切さは理解していつつ、掃除をする発想がないらしいです。それか、掃除の仕方がわからないとか。


 とにかく、ユーリくんが何歳の頃からのことかは知りませんが、見るに見かねて家にやってきて家事を手伝っていたのでしょう。いえ、手伝ってたのではなく、していたんです。


「ナザンとアイシャは、よく話していた。もちろん、他のみんなも同じだと思うけど。だから、別に驚かない。いいふたりだと、思う」

「そうだね。家の関係的にも、政略結婚の可能性はなさそうだよ。妹の家は大きくないし、元々アザンの家と交流が深かったからね。仲がいいふたりの恋愛だよ」

「周りが、策略で結婚を決めるのに混ざって、自分たちもってなった?」

「自分たちは政略結婚に乗らないという意思表示かもしれないね」

「ふたりとも! その話はここまでです!」


 わたしが興味を持って尋ねたからではあるのですが、どうせ参加しない戦いについてあれこれ話すふたりを見て、声をあげます。


 今はもっと大事なことがあるはずです!


「ユーリくんは戦わないなら、ずっと家の中にいてもいいんですよね!?」

「え、うん」


 わたしが大声を出したから、ふたりとも驚いた顔を向けていました。こっちに注目してくれるなら、いいことです。


「でしたら、この家をきれいにしましょう! 汚すぎます。ユーリくんのお嫁さ……恋人として、相手の家がこれでは格好がつきません!」


 別にお嫁さんでもいいんですけど! この家に嫁入りするわけではないですけど、でもこの家が汚いのは許せません!

 きれいにしてみせます! わたし、できる女なので!


「ユーリくん! 草むしりはできますか!?」

「できるけど」


 ユーリくんはしゃがんで、足元の雑草を引きちぎりました。


「こう?」

「違います! それだとすぐ、また生えてきます! 根っこから引き抜いてください!」

「なるほど」


 わたしのアドバイスに、ユーリくんは服を脱ぎました。え、なんでですか?


 わたしの目の前で、ユーリくんは狼の姿になっていききます。そして巨大な狼が、さっき引きちぎった草のあった箇所を両手で掘り始めました。

 なるほど、根っこごと掘り返して取るつもりですか。これを草むしりと言うのは違う気がしますけど。


「ま、まあそれでいいです。取った草と根っこは一箇所にまとめてください。燃やして、畑の肥料にしますから」

「がう」


 土を掘り返しながら返事しました。ここは任せてもいいでしょう。


「トーリさんは家の中の掃除を手伝ってください。まずは散らかったもの掃除です。いらないものは捨てましょう。必要なものだけ残して、どう整理していくか考えるんです」

「なるほど。やってみようか……」

「まずは台所まわりですね。しばらく使われた形跡がありませんけど、普段は何を食べてるんですか?」

「森に行って、獲物を狩ってそのまま食べている。あとは村まで降りて働いて、そこで食事をしたりだよ」

「なるほど……」


 後半はともかく、前半の大雑把さはさすがワーウルフです。尊敬もできますが、やはりワーウルフの生態には呆れてしまいます。

 もちろん尊重もすべきですけど。


「自分で料理することも覚えましょう。教えるので」

「そ、そうか。よろしくお願いします……」


 台所にあった食器の半分くらいは、いつの間にか床に落ちたりしてて割れていました。それを集めて捨てることからですね。

 無事な食器も集めて、積もっている埃をきれいに拭き取ります。そして水で洗って使えるようにします。

 かまども埃がうず高く積もっていて、煤と混ざってひどい状態です。これもきれいにしないと。新品同様にしましょう。


 そんな感じで掃除を続けていれば、日が暮れてしまいました。


 途中、トーリさんがいなくなったと思えば、野ウサギを数匹捕まえてきていました。森に行ってたのでしょう。


「森の、里の近くの範囲にはそんなに出てこないんだけどね。たまに畑の野菜を狙ってウサギが来るんだ。それを捕まえる。奥の方まで行けば、イノシシやシカが出るよ」

「それもおいしそうですね。けど、今夜は野ウサギを食べましょう」

「また、丸焼き?」

「いえ。シチューにしましょう」


 せっかく台所があるんです。手の込んだ料理にしましょう。


 トーリさんの家に畑はなく、野菜が欲しければ農家をやっているワーウルフに買いに行くそうです。

 この里では珍しいことではないそうです。時々出稼ぎに行っているとのことで、お金も心配ないようです。


 根菜をいくつか買ってきてもらって、鍋に放り込みます。そんなに手間をかけるつもりはないので、すぐに出来ました。


「家で温かい食事をするなんて、何年ぶりだろう。美味しいなあ」

「そんな大げさな」

「大げさじゃないよ。母さんが死んでから、家では捕まえた動物の肉を丸かじりするだけだったから」

「それで良いと思えるワーウルフさんの考え方、ある意味尊敬します……」

「ユーリは、本当にいい子と出会えたんだね」

「うん。フィアナは、すごい」

「ありがとうございます……」


 ユーリくんに褒められるのは素直に嬉しいです。

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