ブラックな世界到来 6
ゾンビの出現は、チョットした騒ぎになった。
騒ぎを察知したジーン博士やカミーユの『仲間』の子供たちが駆けつけてきて、カミーユを必死で止めた。
「カミーユ、やめなよ!」
「時は、まだ満ちてはいないんだろ」
そう言って、カミーユの『仲間』の子供たちは、カミーユを諌めようとした。
カミーユは、まわりの忠告は、お構いなし、呪文を唱え続けている。
「ベータミンDで、まだいくらでもゾンビを呼び出し、ゾンビ兵に変えられる」
そう、カミーユは豪語していた。
そして、カミーユは、集まってきたジーン博士や、『仲間』の子供たちの忠告は、受け入れず、かえって、命令した。
高見沢治美は、人ごみの中でその様子を見守っていた。
カミーユが、これだけの力をどうやって手に入れたのか、高見沢治美は、気になった。
「たしかに、カミーユが世界征服という言葉を発したのは、けっして、大げさではない」
「異界から呼び出されたゾンビたちの行動には、なにか規律というものが保たれていていて、優秀な軍隊を思わせる」
そして、ゾンビたちの数が、少しずつ増え、ゾンビは、ヤジウマらを戦慄させた。
その場の様子から、高見沢治美は、カミーユが、ゾンビに命令を送っているということが分かった。
子供たちやジーン博士が、集まったヤジウマの人並みの中に高見沢治美をみつけた。
ジーン博士や『仲間』の子供たちは、懇願のまなざしを高見沢治美に向けた。
カミーユを押しとどめるのに、高見沢治美が、手を貸して欲しいと、訴えていた。
しかし、高見沢治美は、それを気づいてはいたが、カミーユのことは、ほっぽっていくことにとっくに決めていた。
というのは、高見沢治美にはもっと大事な用件が、あったのである。
つまり、高見沢治美の心から離れない屍臭の問題があった。
「この腐臭は、カミーユよりも問題だわ」
高見沢治美は、それを解決するには、コーヒーパーラー「ライフ」に行くのが先決のように思えた。
このカミーユの暴走より大事なこととは、一体何があるのだろうか?
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高見沢治美は、カミーユの暴走の現場をあとにした。そのとき、のど飴と一緒に、問題の女性週刊誌をコンビニで忘れずに購入していた。
高見沢治美は、そのあと、コーヒーパーラー「ライフ」にやってきた。
高見沢治美は、コーヒーパーラー『ライフ』にやって来て、マスターの様子がとても気にかかった。
世間でこのような大事件が起こっているというのに、マスターは、なにか、上の空という様子で、降って湧いたようなゾンビ兵には無関心な様子だった。
マスターは、高見沢治美にはまったく関心を示さなかったし、オーダーも取ろうとしない。
マスターの様子が高見沢治美を不安な気持ちにさせた。
というのも、数日前に、マスターは、ある心配事を高見沢治美に打ち明けていたからである。
それは、マスターのところへ届けられていたベータミンCの供給が、今度打ち切られてしまうかもしれないというものだった。
ということで、高見沢治美は、マスターの不可解な様子は、ベータミンCの供給ストップによるものと考えていた。
ところが、マスターの頭にあったのは実はそれとはちょっと違っていた。
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マスターは、先ほど突然の訪問客、滝ふたばがコーヒーパーラー『ライフ』を出て行った後、しばらくは、自分の興奮が収まるのを待った。でないと、なかなか、思うように記憶が働かないのである。
マスターは、自分の呼吸が整ったのを見計らった。
マスターは、ある名前を思いだそうを集中した。
マスターの側では、バンドマン ツヨシと高見沢治美が、まじめな顔で話し合っていた。
しかし、マスターはその話しに加わることはなかった。
やがて、高見沢治美が慌ててコーヒーパーラー「ライフ」を出て行った。
高見沢治美は、とてつもない役割を、仰せつかっていたことを急に思い出した。その役割というのは、まさに今実行しなければならなかった。
そんな、高見沢治美の様子だった。
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ここで、少しばかり、コーヒーパーラー「ライフ」のマスターについて話しておく必要がある。
コーヒーパーラー「ライフ」のマスターは、高見沢治美が、店を出て行くのに気が付いた。
コーヒーパーラー「ライフ」のマスターは、ついに自分の考えをまとめるのに成功したようだ。
マスターは、ようやくまわりのことに気を配りはじめた。
「そういえば、先ほどバンドマンカミーユと高見沢治美さんが、カミーユのことについて、熱心に話をしていた様子ですが、カミーユがなにかしでかしたのだろうか」
「カミーユ?! それで思い出した! 」
コーヒーパーラー「ライフ」のマスターは、「カミーユ」という言葉で何か重要なことをど忘れしそうになっていることに気づいた。
「カミーユの名刺か! そうだ。それなら彼女と連絡が取れるぞ」
マスターは、と思った。
マスターは、カミーユから、いろんな肩書きの名刺などを受け取っていた。
カミーユは、沢山の肩書きを持ち、住所や連絡先の電話番号を頻繁に変更していた。
そして、変更のたびに、カミーユはコーヒーパーラー「ライフ」のマスターに名刺を渡していた。
マスターは、店の引き出しから、カミーユの名刺を取り出した。
引き出しからは、無数のカミーユの名刺が出てきた。
名刺は、バラバラになっていて、ぜんぜん整理されていなかった。
そんななかで、お目当ての名刺を探すのはマスターにどっては一苦労だった。
「いつから、こんなことになってしまったのやら」
マスターは、自分のことながらあきれてしまった。
気づいてみるとコーヒーパーラー『ライフ』の床上に、ほかにもカミーユの名刺が散乱しているのに気づいた。
滝ふたばが、環境迷彩を駆使してこの引き出しのあたりに潜んでいたのをマスターは、思い出した。
滝ふたばも、一所懸命にカミーユの名刺を探していたのだろうか。
マスターは、そう思った。
マスターは、カミーユの名刺をあつめると、はじから、全部の名刺のチェックをはじめた。
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闇の製薬会社から、とある情報がもたらされたときには、くるべき時がきたとマスターは覚悟を固めた。
今、コーヒーパーラー「ライフ」のマスターが直面する危機は、シンメトリックの怒りな由来するものであった。
当初は、シンメトリックの指導のもとに、ベータミンCの研究を行っていたジーン博士や『仲間』の子供たちであったが、カミーユとの再会で、彼らの心に変化が生まれたようだ。
何時の頃からか、カミーユとジーン博士は、シンメトリックを裏切り、シンメトリックに内緒で、独自にベータミンDの開発研究を行っていた。
そして、カミーユは勝手に有力ケミカル企業と提携して、ベータミンDの大量生産にこぎ着けたのである。
まもなく、カミーユとジーン博士の裏切りに気づいたシンメトリックであった。
しかし、シンメトリックは、直接的に、カミーユやジーン博士と対立することを避けた。
というのも、カミーユとジーン博士の背後にいる大きな力を恐れたのである。
かえって、シンメトリックの方が、カミーユたちから姿を隠した。
ベータミンCに関しても、カミーユからの情報をもとに、カミーユと提携さた企業が生産に参入してきたために、シンメトリックが関係する闇製薬会社は、仕事が減った。
それほどの権力というか、大きな庇護を手に入れたカミーユとジーン博士ではあったのだが、これだけはと、警告しておかなければならないことがあったのだ。
それは、シンメトリックは、カミーユとジーン博士の忘恩にたいする復讐の準備を整えたということであった。
「このままではすまさない。シンメトリックはカミーユに復讐するはずだ」
シンメトリックをよく知る、コーヒーパーラー「ライフ」のマスターは、シンメトリックの動きには十分な注意を払っていた。
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マスターは、やっと我に帰ったのだが、そして、テレビで報じられるゾンビ騒動にたまげてしまった。
「ゾンビたちが、ついに、ここまで入り込んできたとは……」
テレビを見て、マスターはつぶやいたのだ。
そして、マスターは、コーヒーパーラー「ライフ」の床で苦しみもがく、バンドマン ツヨシの姿にようやく気がついたのだ。
マスターは、苦しむバンドマン ツヨシに手当てを直ぐにはほどこさなかった。
その前に、マスターは、カミーユの名刺の一枚にメモされた電話番号でテレビ局のある女子アナに電話した。
マスターは、その女子アナに伝えた。
「カミーユは、シンメトリックの罠にはまってしまったのかもしれません」




