ブラックな世界到来 4
高見沢治美とカミーユとカミーユの双子の兄弟は、日本での再会のあと旧交を温めることになった。
そして、高見沢治美とカミーユの双子の兄弟通りとの兄弟のようなつきあいが復活した。
高見沢治美から見ると、カミーユは、当時、自分のことについてはあまり語りたがらなかった。
カミーユは、高見沢治美から、自分たちが所属する『仲間』や、『仲間』の歴史や、『仲間』の運命に聞くのが好きだった。
カミーユらは、『仲間』がエイリアンの血を引くという由来の民族であるという話を聞くのを好んだ。そのように、話が展開していくことを望んでいた。
高見沢治美は、カミーユにも、カミーユの双子の兄弟にも、知っている限りのことを話して聞かせたのだが、すぐにネタが切れてしまった。しかし、カミーユとカミーユの双子の兄弟は、同じ話を何度も何度も話してくれるように高見沢に頼んできたのだ。
カミーユは、高見沢治美のことをHALに見立てて考えたり、話をしたりした。
「HALは、高見沢治美ではありませんか。高見沢治美は姿、形は、日本人であるかもしれないが、心は私たちと同じ者であるのです。私たちと少しも違いません」
「わたしは、旅の『仲間』の長老には、高見沢治美は、HALであると教えられてきたし、高見沢治美も、そうと信じてきたのです」
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カミーユが、準備していた事件は、
この事件はカミーユのDNAにすでに書き込まれいたもの。
カミーユは、HALである高見沢治美と接触することで大きな影響を受けた。
カミーユのDNAに記録されていた情報は、現実化し、このような事件を起こしてしまったのだ。
これからこの町に起こた騒動は、カミーユの中に既に記録されていたものということができた。
カミーユは、今度の事件を起こしたとき、まだ、少年であったのだが、すでに、『仲間』の特性の「芽」のようなものが、その行動や、容姿や仕草の中に現れていた。
高見沢治美には、カミーユに関わる人間たちは、カミーユの中にある「芽」が速やかに、正しい育つように動いているように見えた。
カミーユは、よく高見沢治美に連れられてコーヒーパーラー『ライフ』を訪れた。
カミーユは、自分のお気に入りの席につくと、うたた寝を始めたものだ。
そんな時、コーヒーパーラー「ライフ」のマスターは、カミーユのために決まって、古い、古い時代のジャズのような曲をかけた。
それは、なんどもなんども、同じ、フレーズが繰り返される。壊れたレコードのような演奏の曲だった。
それは、ジンタ(昔風なサーカス音楽)、 そういえば、そういうタイプだったかもしれない。
コーヒーパーラー「ライフ」のマスターは、何か考えがあってのことかわからないが、カミーユがやってくると、このような系統の曲をかけるために、コーヒーパーラー「ライフ」には、不思議な雰囲気が醸し出されることになった。
かって、世界を『仲間』と旅していた時代への郷愁を呼び覚ますのであろうか。カミーユも、このタイプの演奏を好んで聴いた。
カミーユは、その独特の雰囲気の騒々しい音楽を聴きながらうたた寝したのだが、そんなときのカミーユの表情は、彼の年齢にすれば似つかわしくない老成した表情であった。
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一方、カミーユというのは、なぜか分からないのだけど、始終いらいらしているところがあった。
そういうところが、ほかの子供とは違っているのだが、カミーユがが何かに夢中になると、普通の子とは全く違う集中力を発揮した。
時には、その集中力が尋常ならぬところまで高まっていくことさえあるのだ。
カミーユには、時には、魔法を操った思わせることがあった。
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ところで、カミーユの『仲間』たちというものの最大の特徴は、血液の臭いと、死の臭いに対する臭覚であった。
『仲間』たちには、概して、早死の傾向があった。というのも『仲間』たちは、そろいもそろって大酒飲みで、愛煙家で、スピード狂で、喧嘩好きだったからである。
『仲間』は、つまり、熱狂と血の臭いに敏感なのだ。
そして、『仲間』は血の背後に潜む、死の臭いにも敏感なのだとは、どういうことなのか、わかりやすくいえば、それは、人にとりついた死神が見えるということなのだ。
『仲間』がこの人死んじゃうと、感じれば、その人物は、その時は、元気いっぱいであったとしても、まもなく、天に召されることになるのである。
もちろん高見沢治美にも、『仲間』と同じような特性が備わっていた。彼女の嗅覚も屍臭に活発に反応したものだった。
高見沢治美には、この数日まとわりついて離れない屍臭があった。
――私の知っている誰かが死のうとしているのかしら? でも、いったい誰が死のうとしているのかしら?
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その日、カミーユが事件を起こした頃、高見沢治美が女性週刊誌を持って、コーヒーパーラー『ライフ』に入ってきた。
高見沢治美は、注文していたベータミンCを受け取りにコーヒーパーラー『ライフ』にやって来ることになっていた。
コーヒーパーラー『ライフ』の店内には、カミーユが引き起こした異変を伝える臨時ニュース特番の放送が流れていた。
バンドマン ツヨシが心配そうな様子で、そのニュースを聞いていた。
一方、マスターは、考え事をしている様子であった。
「それって、これと関係あるのはずよ!」
高見沢治美は、例の滝ケートと一之条隼人との熱愛を報じる女性週刊誌をバンドマン ツヨシのいるカウンターテーブルに置いた。
高見沢治美は、確信にみちていた。
バンドマン ツヨシは、高見沢治美が、テーブルの上に置いた女性週刊誌を手に取ると、読み始めた。
バンドマン ツヨシは、女性週刊誌を熱心に読んだ。
バンドマン ツヨシは、「なるほど! でも、そんなことって……」と、大きな声を出した。
バンドマン ツヨシの大きな声は、彼の驚きを表していた。
「恋愛の情熱という者は、とても大きな力があるますね。あの物静かな少年をこのような大胆な行動に駆り立てるのですから」
バンドマン ツヨシは、柄にもないことをつぶやいた。
そして、バンドマン ツヨシは、後ろにいた高見沢治美の方を振り向くと、言った。
「しかし、高見沢治美さん、どうしてそんなに落ち着いていられのですか」
バンドマン ツヨシの指摘は、鋭いものがあった。
高見沢治美には、アタフタしたところが全くなかった。
「僕は、この事件に関しては、冷静ではいられません。高見沢治美さん、あなた、この事件の現場にいて、カミーユがゾンビ騒動を引き起こしたのに立ち会っていたとかいうのじゃありませんよね」