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ショータイム 5

マスターが、カミーユに連絡を入れたのは、カミーユのゾンビたちとドレミヒーローとの闘いが佳境にさしかかった頃であった。


マスターは、コーヒーパーラー「ライフ」の床に、散らばったカミーユの名刺に書かれていた連絡先へとかたっぱしから、連絡を取ってみた。


しかし、どの電話番号も「現在使用されていない」番号ばかりであった。


カミーユは、頻発に連絡先を変更していた。カミーユは、理由があって何かから逃れようとしていた。


あきらめかけて、マスターはたばこでも吸って一服しようとした。


マスターは、たばこを切らしていることに気づいた。


コーヒーパーラー「ライフ」の近くのコンビニでたばこを買おうとして、財布を取り出してみると、長財布の中に、カミーユの名刺を見つけた。この名刺には、試していないカミーユのスマホの番号が書かれていた。


マスターは、そこで、そのカミーユの電話番号に連絡を入れた。


今度は、電話がつながった。


しかし、マスターのスマホから着信音は聞こえてくるのだが、なかなかカミーユ本人は出なかった。


マスターは、確かにカミーユが騒動を起こしていることは知っていた。


実は、マスターは、スノードームで、カミーユがゾンビたちを操り、ドレミヒーローと闘っている真っ最中であることを知らなかったのだ。


それでも、マスターはやっとカミーユに連絡を取ることができた。


カミーユが電話に出た。


マスターのスマホを通して、観衆の歓声、悲鳴が聞こえてきた。剣戟とも爆発音ともつなかない大きな騒音が通話の邪魔になった。


カミーユの声も、遠くなったり、近くなったりが激しい。雑音が続いて、電話が通じなくなったのではないかと思う時もある。


それでも、マスターは、カミーユに伝えたいことがあった。


それは、マスターが手に入れたパワースーツについての新情報であった。


「チーズケーキだよ! カミーユくん。今日、高性能のパワースーツがうちの店にやってきたんだ。そして、その性能の高さは実感できたんだが、一つ問題があった」


「そのパワースーツが、うちの店からチーズケーキを持ち去ったのだが、あとで見たら、そのチーズケーキの一部のかけらが床に落ちていたんだよ」


「そのような高性能のパワースーツにそのようなミスは決して起こりえないものなのだよ。ただ、起こるとしたら……」


「パワースーツは、まだ完成したとは言えない状態にある」


「『バビル文書』の予言。パワースーツが、ゾンビたちを焼き尽くすという予言は当たらないかも知れない。君たちのゾンビたちたちが、認められる世の中がやってくるかも知れないぞ」


マスターは、自分の言いたいことを相手の返事も待たずに、一気にまくし立てた。


昔、パワースーツの研究を捨てることになったマスターは、パワースーツへの反発から、現状をパワースーツに肯定的なものととらえた。


しかし、カミーユの現状の捉え方はマスターとは、逆であった。


「……そうか。そいつは、ヤバイですね。あの人たちが、未完のパワースーツを持ち出してくるのはまったく想定外でしたよ」

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