ショータイム 4
「秋葉原アナ! ドレミヒーローは、空腹というこの悲惨な事態を全身で感じ取ることによって、本物のヒーローとなるのです」
「日々の生活においは、我々は食事をとるによって、日々の活動の為に必要なエネルギーを手に入れています」
「ドレミヒーローの場合も、日々の暮らしにおいては、活動のために必要なエネルギーは、食事を通して得ています」
「しかし、ドレミヒーローをヒーローとして見ますと、ドレミヒーローは、食事で得られるエネルギーよりもはるかに多くのエネルギーをヒーローとしての活動のために使っているのです」
「このエネルギーの出所はどこなのでしょう。ドレミヒーローこと、ハロルド洸一にはエネルギー発生装置のようなものはありません。不思議です」
「そこで、滝ふたばは、この不思議を解明しようと研究を開始しました。いろんな状況を作り、闘いにおいて生じると想定される負荷を実験室でドレミヒーローにかけてみました。その実験は、ドレミヒーローに対して繰り返して行われました」
「実験が始まって直ぐの段階では、ドレミヒーローは、弱虫ぶりを発揮して、僅かな負荷の段階で弱音を上げました」
「しかし、負荷がある限度を超えたところから、どんな負荷にも対応する、あるいはそれに反発する力が必ずドレミヒーローの中に生まれてきたのです」
「そして、実験の最終段階、負荷が最大になるとドレミヒーローは、ヒーローらしく最大の負荷を平然とはねのけてしまうのです。それは、外から見ると無限のエネルギーがドレミヒーローの中から沸き起こっているように見えました」
「滝ふたばは、どういう条件であれば、出所不明の無限エネルギーが、ドレミヒーローの中に湧き出ることになるのか調べてみました」
「滝ふたばは、ドレミヒーローの中で、エネルギーが、その力が湧き出すきっかけが分かれば、ドレミヒーローがどこでこの膨大なエネルギーを手に入れているか分かるような気がしたからです」
「このようにして、滝ふたばは、ドレミヒーローを研究を続け、ひとつの結論に到達しました」
「空腹の悲惨さというものが、ドレミヒーローの中に無限とも思われるエネルギーが湧き出すきっかけとなっている、と」
ジーン博士は、秋葉原レイの方を見てみた。
「……」
秋葉原レイには、理解できていなかった。
しかし、ジーン博士は、かまわず話を続けた。
「ドレミヒーローに潜む素晴らしい力は、ドレミヒーローを空腹にすることで、引き出すことができる、そう滝ふたばは、考えたのです」
「ドレミヒーローが持つ特別な潜在能力というものを、特定の目的に向かって、完全に制御した形で、振り向けるということが出来れば、それはどんなに素晴らしいことだろう。滝ふたばは、考えたのです。そして、ドレミヒーローを空腹状態に追い詰めることで、ドレミヒーローが持つ力を闘いの場面で有効に利用することができる。それを、滝ふたばは発見したのです」
ジーン博士は、秋葉原レイをまた見た。
秋葉原レイは、ジーン博士の話は完全には、飲み込めてないようにも見えた。
「ドレミヒーローの潜在能力という、無限のリソースを解放するための最善の方法は、その人間を極限状態に追い詰めて見ること。ドレミヒーローの場合は、空腹な追いやること。これが、滝ふたばが見つけ出した答えだったのです」
ジーン博士は、秋葉原レイのために、ドレミヒーローの両脇に控える二匹のロボット犬を指差した。
「『ワンワン司令』と呼ばれるあの二匹の犬たちは、ドレミヒーローに最高の働きを可能にするために、ドレミヒーローを空腹の極限状態で保つために様々な活動をやっているのです。あれも滝ふたばのアイデアです」
「あの二匹のロボット犬は、敵と戦うときにだけ現れるのではなく、日頃は、ドレミヒーローに寄り添い、健康状態、精神状態をチェックし、ドレミヒーローが最高のパフォーマンスを発揮することができるようドレミヒーローの日々生活環境を整えているのです」
ジーン博士は、さらに、ロボット犬についてもう少し言及した。
「そして、これが一番大事なことなんですけど、彼らは、スパイとしても、非常に重要な役割を担っているのです」
「彼らは、愛くるしい子犬としてやすやすと、敵の懐には入っていき、敵の中核の情報を手に入れることも可能なのです」
ロボット犬の話に関しては、秋葉原レイも納得がいった様子であった。
「彼らは、ほんとうにあの愛くるしい犬たちですからね……」
「この闘いは、ドレミヒーローに任せて安心。それがジーン博士のお考えなのですね。よく分かります」
秋葉原レイは、ジーン博士との難しいインタビューを締めくくろうとした。
しかし、ジーン博士が一言付け足した。
「ひとつ問題があるとすれば、これが、違法な闘いである点です。実は、この闘いは、ドレミヒーローとヒーローズアカデミーが交わした契約書には記載のない闘いなのです」




