ショータイム 2
東京テレビ女子アナ、秋葉原レイは、取材チームに配られた「台本」、カミーユのゾンビとドレミヒーローとの闘いの結末が書かれた予言の書とも言うべき「台本」に実は目を通していた。
しかし、秋葉原レイは、「台本」に書かれた「死」という文字が、目に入ってきたために、嫌な気分になり、じっくりと読んではいなかった。
「もう少し、予備知識があったのなら、ドレミヒーローの闘いがどのように進んでいくのか分かっていたら、こんなに不安な気持ちにはならなかったはず」
それが、秋葉原レイにとっては後悔している点であった。
しかし、この予言の書とも言うべき中継用の「台本」は、闘いの冒頭の部分から予言を外してしまっていた。
「台本」には、ドレミヒーローは、パワースーツなしに闘うというように書かれている。
しかし、実際に秋葉原レイの眼前にいるドレミヒーローは、パワースーツを着用しているのだ。
予言を外してしまった「台本」のおかげで、秋葉原レイは気持ちが少し楽になったのは確かである。
しかし、目の前にある、ドレミヒーローの生気のないやつれた姿を見てしまうと、秋葉原レイは、やはり不安な気持ちになる。
秋葉原レイは、ため息をついてしまった。
ジーン博士は、秋葉原レイのこのため息を見逃さなかった。
「秋葉原レイさん、あなたの予想では、ドレミヒーローが負けてしまうと思っていますね」
「ドレミヒーローの敗北を考えるとすれば、それは、秋葉原レイさん、あなたが自分の目に欺かれ、騙されているからです。あなたは、嘘をつくものと、嘘をつかないものを区別しなければなりません」
秋葉原レイは、怪訝な表情を浮かべた。
秋葉原レイは、ずーっと年下のジーン博士に注意されたように感じ、少し感情的になっていた。
秋葉原レイは、ジーン博士に聞いた。
「自分の目が信じられないとすれば、一体、何が信じられると言うのですか? ジーン博士、世の中に嘘をつかないものがありますか」
ジーン博士は、秋葉原レイの反発を予想していた。
ジーン博士は、若さに似合わない、静かなゆとりのある態度で秋葉原レイの質問に答えた。
「数字は、嘘をつくことができません。無数の実験から得られた数字というものは、嘘をつくこともありません」
「私は、繰り返しドレミヒーローに対して行った実験から得られた膨大なデータを手に入れています」
「このデータをキチンと読むことによって、滝ふたばと滝晴生とのヒーローズアカデミーの陣営がどのように、カミーユのゾンビたちと闘おうとしているのかが見えてきます」
「闘いがどのように展開して、どのような結末を迎えるのかも見えてきます」
ジーン博士は、断言した。




