ブラックな世界到来 2
コーヒーパーラー「ライフ」に、契約の書面の写しを持ったバンドマン ツヨシが現れた、ちょうど同じ頃、カミーユの怒りが、頂点に達していた。
「ヒーローもののTVドラマでよくある、ほら、ヒーローとヒロインのイチャイチャシーンそのまんまじゃないか。滝ケートちゃん、いったい俺のことはどうなったんだ!」
カミーユは、キオスクで買ったばかりの女性週刊誌を横に引き裂いた。
カミーユは、その引き裂かれた雑誌をまとめてゴミ箱に投げ捨てた。
カミーユは、思い直して、同じ女性週刊誌を買いにキオスクに戻った。
カミーユの頭の中は、ヒーロードラマで人気沸騰中のイケメンアイドル、一之条隼人と同じヒーロードラマで共演した美人アイドル滝ケートの熱愛記事のせいで怒りに沸き立っていた。
カミーユは、なんとか冷静を保って、その記事をもう一度読み直してみた。
自分つまり、カミーユと滝ケートの関係には、未来は全くないことが判明した。
――やっぱり、そうだろう。思った通りだ。こいつら、結婚しそうだぜ!
カミーユは思った。
カミーユは、無念の面もちで黙り込んだ。
カミーユは、唐突に何かつぶやいた。
「おかげで、吹っ切れたぜ」
カミーユは、つづいてつぶやいた。
「世界征服につながる実験計画、『バビル大作戦』を発動(決行)するときがやってきた」
「世界征服につながる実験計画」、「バビル大作戦」などという言葉は、ようやく中学生になったばかりのカミーユが、軽々しく言ってしまうには、あまりにも、重大すぎる内容というか、意味を持っていた。
実際、カミーユにとって、「バビル大作戦」は、人生最大の決断であった。
13歳のカミーユは、「バビル大作戦」を宣言した。
そのきっかけとなったのは、カミーユの、美少女アイドル、滝ケートに対する一方的な恋愛感情、初恋というものであったというのが面白い。
自分を裏切って一之条隼人に走った美少女アイドル、滝ケートへのカミーユの復讐心が、自暴自棄の気持ちがバネとなって、カミーユは、ようやく懸案の「バビル大作戦」を宣言する決断を下すことができた。
ゾンビ研究を重視し始めた都は、カミーユのために、「バビル大作戦」のために貴重な「龍の形見」を提供していた。
カミーユの「バビル大作戦」は、手のひら大のスノードームに似た容器の中で展開される広大な空間で、実施されることになる。
実験計画の実施地域がゆっくりと、スノードームに似た容器「龍の形見」の中に取り込まれ始めて行った。