世界征服 4
ところで、ドレミヒーローとカミーユが、率いる「ゾンビ」たちとの闘いが始まるのを今かと今かと待ちわびる人だかりであふれるスノードームであったが、そのスノードームの一角に、東京テレビの女子アナ、秋葉原レイの率いる取材チームが、ジーン博士に対してインタビューを行う準備をしていた。
ところで、秋葉原レイの取材チームは、あとでわかるとある理由でカミーユやジーン博士の取材を始めた。
秋葉原レイは、最初からカミーユやジーン博士に興味があったというわけではない。
秋葉原レイは、局の編成会議の命令で了解もなく、知らないうちに、ある取材チームのメンバーに加えられてしまっていた。
その秋葉原レイの取材チームは、最近闇世界で急速に勢力を伸ばしつつある犯罪グループとそれを取り巻く事件の取材をやっていた。
その犯罪グループは、カミーユやジーン博士という国籍不明の少年たちが率いている犯罪グループで、犯罪グループの構成員もたいていは、中高生くらいの年頃の少年、少女たちであった。
この犯罪グループのアジトと対する最初の直撃潜入ルポの際のインタビューというかやり取りで、秋葉原レイはすでにカミーユやジーン博士とは知り合いになっていた。
ところで、秋葉原レイが、この日の騒動に関する取材資料を取材チームから受け取ったのは、一週間ほど前のことであった。
秋葉原レイが、受け取った取材資料には、スノードームの中で行われるだろうドレミヒーローこと、ハロルド洸一とカミーユが操る「ゾンビ」との闘いの背景について集められた情報が書かれていた。
この闘いの背景に関する情報は、ドレミヒーローこと、ハロルド洸一らが所属するヒーローズアカデミーという芸能事務所から取材して、得られたものらしい。
ところで、秋葉原レイが、カミーユによって起こされた「ゾンビ」騒動という、この事件のために受け取った取材資料の中に、秋葉原レイには、理解できない資料が、存在していた。
それは、資料の中にあった一冊の台本であった。
それの中には、秋葉原レイアナウンサーとその取材チームが訪れているスノードームの中で、これから始まろうとしているドレミヒーローこと、ハロルド洸一とカミーユが操る「ゾンビ」の闘いの次第というか成り行きというか、そして、結末までもが書かれていた。
「これから、起こることが、未来のことが、どうして一冊の台本にまとめら、私がもらったりしているのか」
秋葉原レイは、納得がいかなかった。
それに対して、取材チームのチーフが言った。
「結末は、分かっていたほうが、取材は楽になるからね」
秋葉原レイは、ムカついた。秋葉原レイは、自分がバカにされているように感じたからだ。
しかし、今日、スノードームを訪れて、秋葉原レイは、スノードームの広々とした中の様子や押しかけて来た人々を見渡してみた。
秋葉原レイは、スノードームに自社の東京テレビから生中継のためのカメラクルーがやって来ていることに気づいた。
そして、自社の東京テレビのカメラクルーは、みんな秋葉原レイが一週間ほど前にもらったのと同じ台本をもっていた。
「趣味の悪い。ブラックジョーク。私を怖がらせようとしているのね」
秋葉原レイは、そう思った。