第2話:忍者部
「実はこの社会科研究部、忍者部なんです」
『はぁ!?』
古賀の言葉に、古賀を除いた4人が声を揃えた。
「まぁ、そんな反応になるよねー。でも、私が言ったのは冗談でもなんでもないよ?実際にほら、部屋から出られないでしょ?これも忍術のひとつだからね」
その言葉に、4人は呆然としている。
「とりあえず、話を進めるね。といっても、ここからの話はこの場ではなんだから、場所を部室に移してからにします」
「部室って、ここじゃないんですか?」
古賀が言うことに対し、4人のうち女子生徒が質問した。
「んー、ここは仮の部室ってやつでね。実際の部室は、別にあるんだよ。この部屋に入り口があるんだけど、どこかわかる?」
そう古賀が言うと4人は、揃って古賀の後ろに掛けてある掛け軸に目を向ける。
「やっぱり、掛け軸怪しいと思うよねー。私も、このシステムだけはどうにも納得できないんだよね。でもみんな正解。入り口は掛け軸です。といっても、めくった裏に入り口があるわけじゃなくて、掛け軸自体が入り口に変わるんだけどね」
そう言った古賀が掛け軸に触れると、掛け軸が輝き出す。
「さ、着いてきて。大丈夫、悪いようにはしないから」
そう言って、古賀は輝いた掛け軸に歩き出し、そのまま姿を消す。
それを見た4人は、不安そうに視線を合わせる。
「シゲ、どうする?」
聡太は、不安そうに重清に聞いた。
聞かれた重清は、目の前で見た後継に、興奮していた。
「ソウ、おれ、あの掛け軸の向こうに行ってみたい!小さい頃からじいちゃんは、おれが忍者の子孫だって言ってた。今までそれを信じたことはなかったけど。でも、事実がどうでも、もしかしたらおれ、ほんとに忍者になれるのかもしれない。そう思ったらおれ、ワクワク止まんねーや!」
それを聞いた聡太は、さっきまでの不安そうな顔を崩して、ため息をつきながら
「あー、もう!どうせ行きたいっていうとは思ったよ!ほんと、どうなっても知らないよ?何かあったら、シゲに責任とってもらうからね!!」と、あきれた顔をしながらいった。
その会話を聞いていた4人のうちの1人である女子生徒が、同じく不安そうな顔を崩しながら
「プッ、責任とってって、なんか逆プロポーズみたいね。でもお陰で少し不安が無くなったわ。ありがと。あたし、1組の森茜。よろしくね」
笑いながら言った森に、重清が笑いながら
「あぁ、よろしく。おれは3組の・・・」
と自己紹介をしようとすると、残りの1人の男子生徒が話しに割って入ってくる。
「なぁ、自己紹介ならあの掛け軸の向こうでもできるんじゃないか?とりあえず、みんなあの向こうに行くってことでいいんだよな?だったら、早いとこいってみようぜ?」
自己紹介の出鼻をくじかれた重清も、その言葉には納得し、頷く。
「よし、じゃぁ行ってみますか。で・・・」
そう言いながら残り3人を見回して聞く。
「誰から行く??」
それを聞いた聡太は呆れながら
「あれだけ言ったシゲが、最初に行くべきだと思いまーす。」
と言うと、森は満面の笑顔で頷き、残った男子生徒も、ニヤリと笑って頷いた。
「け、決定??」
重清が不安そうに3人を見るも、3人はただ、同時に頷くだけだった。
「きみたち、初対面だよね。なんでそんなに息が合ってるのかな??」
「いいから、早く腹くくって行きなよ」
重清が非難がましく文句を言うも、聡太の無情な命令が下る。
それを聞いた重清は諦めながらも、それをこれから起こるだろうことに対する好奇心で上書きして言う。
「ま、しょーがないか。とりあえず、行ってみますか!」
さっきまでのやり取りが嘘だったように、意を決して掛け軸へと向かっていく。
掛け軸の目の前で一度止まり、それから意を決してそのまま掛け軸の向こうへと歩いていく。
一瞬の眩しい光のあと、目を開けるとそこには先ほどと同じ部屋があった。直前までと違うのは、目の前に古賀が立っていたことだけだった。
「騙されたのか?」と重清が思っていると、残りの3人も次々に掛け軸の向こうから部屋へとやってきた。
「あれ、ここってさっきと同じ部屋じゃない?」
森がそういうと、古賀が話し始めた。
「さて、毎年恒例のリアクションが見れたところで改めてご紹介します。ここが、忍者部の部室です。
さっきまでと同じ部屋だと思っていると思いますが、もちろん違いますよ?その証拠にほら!」
そういって古賀が図書館につながるはずの扉を開くと、そこには図書館ではなく、部屋に来る直前まで重清と聡太が野球部の練習を見ていた、学校のグラウンドがそこにはあった。