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警視庁雑務部雑務総務課〜父の無実の罪を晴らすため就職しました〜  作者: 紫苑
警視庁雑務部雑務総務課 ─職場と人物─
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第五話 新人の印象 西行寺 歩の視点

今日、この部署に新人が入って来るらしい。



しかも、オ・ト・コ・ノ・コ♡ですってぇ!

キャー! イケメンだったらどうしましょぉ~。



と、脳内に自分好みのイケメン達を並べてみる。


「ハァ……いいわねぇ」


熱い吐息を一度はき、思わず舌舐めずりする。


「ちょっと! イケメンは私のよ!」


バンッ‼︎ と両手でデスクを叩いて立ち上がり、私を睨みつけるソフィアと目が合った。



どうやら、ソフィアも同じことを考えていたようねぇ。



「いやぁねえ、イケメンからそうじゃない奴まで欲しがるようなアンタと一緒にしないでよぉ。そんなんだから本命が出来ても相手が振り向いてくんなんのよぉ」


「よ、余計なお世話よ!」


頬を膨らませ、プンプンと顔を真っ赤にして怒る姿は痛い。それが許される年齢は容姿を見るに過ぎているはず。そのぶりっ子さえなければ、彼女に惹かれる男は増えるだろに。



ほんと、残念な子ねぇ。 

まぁ、教えるのも面白くないから教えてあげないけどぉ。



この誰が見ても痛々しいぶりっ子で警視庁の女性職員だけでなく男性職員をも引かせている。なので、同性の敵はできてはいないが、男としてはぶりっ子をする度にソフィアの豊満な胸が揺れるので、そのキャラに引きながらもちょっとラッキーだと密かに思っているよう。けれども、うちの部署は慣れているのでもう何も思わない。


「お前ら、もう会ったのか? そんなイケメンだったか?」


「何処で見たんだ」「もう話したのか」等と私たちが答える間も無く食い気味に根掘り葉掘り士郎さんが仏頂面で聞いてくる。まるで、尋問されてる加害者の気持ちになる。珍しく興味津々な士郎さんに少し驚き、私は思わず目を丸くした。



入ってくる新人は同性の男なのにこの反応、よっぽど後輩ができるのが嬉しいんだろうねぇ。



一方、椿ちゃんはいつもより落ち着きがない。彼女の部屋からガサガサ、ゴッ、ドンッ等の音が聞こえてくる。今は事件もなければ難しい案件等も頼まれておらず、忙しくする理由がない。



……やっぱり、気にしてるのねぇ新人君。







コミュニケーションの苦手な椿ちゃんにとっても、いい刺激になればいいなと歩は思い、椿の部屋のドアに視線を移し、ふっと笑みをこぼした。




***





「本日付けで、こちらに配属されました! 高良 正人と申します! 宜しくお願い致します!」


そのハキハキとした声、ニカっと太陽のような爽やかな青年に、私は、



何か体育会系(脳筋)っぽいわねぇ。



と思った。


イケメンといえばまぁそうなのでしょうけど、思い浮かべていたイケメンとは程遠い。



もうちょっと、細くてしなやかな身体だったら抱けたわぁ。まぁ、そんなことしたらクビになるからしないけどぉ。



実際、正人君と話してみれば、良くも悪くも素直で嘘のつけない子だと思った。彼は最初、バスローブとオカマとウインクと投げキッスに分かりやすく引いていた。


バスローブについては、何もやることがなくて暇で筋トレをしていたら汗をかいてお風呂に入った後だったから仕方がなかった。


筋トレの為の器具やお風呂はこの部署のドアを開けて直ぐ目の前にある。地下一階は他部署は使わないし、滅多に人も来ないので何を持ってこようが、設置しようが自由だった。



これでぜーんぶ経費でおちたら快適なのよねぇ。



だからといって、風呂を自腹で設置したわけじゃない。美を追究し、常に自分磨きを怠らない私にはお風呂は必須アイテム。それは、ソフィアも同様の考えらしく課長に頼み込んで設置してもらったのだ。


私は、頼み込んだだけだったが、ソフィアはそれだけでは済まず、持ち前の巨乳に課長の手を挟んだり課長の後頭部を持ち顔面を巨乳に押し付けたりしていた。



まるで逆セクハラねぇ……。



ソフィアのその様子から必死さが窺えたが同時にそこまでするのかと引きもした。

窒息しかけた課長が参ったとソフィアの胸に顔を沈めたまま手を上げて、風呂を設置するに至った。

窒息死しかけたにもかかわらず、課長は天国にいたのかのような満面の笑みを浮かべていた。



まったく、気持ちが悪いわねぇ。



思わず苦虫を噛み潰したような気持ちになった。

とはいえ課長のお金でお風呂が設置されることになったので、口には出さず心の内に留めておくだけにした。


正人君と話していると彼の視線が私の筋肉に釘付けになっていることに気がついた。キラキラした目で見ている。まるで憧れの人でも見るかのような。案の定、筋トレや筋肉について質問してきた。



やっぱり素直でわかりやすい子ねぇ



と思わずふふふと声を溢しながら自然と笑顔になって気がつき、ハッとした。



この子、オカマの私を敬遠しないのねぇ……。



勿論、この部署で敬遠されたことはない。

しかし、他部署の人と関わるとわかる。陰口には敏感な方で、悪口等は聞いたことは殆どない。だから、オカマというのは男として関われば良いのかもしくは、女として関わればいいのか分からないから対応に困り自ら私に関わりを持とうとしないのでしょう。でも、正人君はそんな事も気にせず話しかけてくれていた。その様子をみていると、彼が引いていたのは私がオカマだからということではなく、初対面でウインクと投げキッスをされたからなのではないかと解釈した。


あの仏頂面の士郎さんやコミュニケーションの苦手な椿ちゃんとも積極的に話しているくらいだから、きっとそうなのでしょう。



本当にいい子が来てくれてよかったわぁ。好みのイケメンじゃないのがちょっと残念だけどぉ。






歩はそんな事を思いながら、正人に優しい笑みを向けていた。



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