第五十一話 驚愕と驚愕
退院手続きを終えて、ようやく退院となった。
俺のスーツは、課長が洗っておいてくれたらしく、服部と対峙する前の時よりも綺麗になっていた。
チェリーブロッサムプラネタリウムと部署に置いた荷物は、他のメンバーが持ってきてくれたらしい。その荷物を病室のロッカーから取り出して俺に手渡してくれた。
有難いけど、バレてないよな?
メンバーから貰ったお見舞いの品々は、一旦部署に預け、後日受け取りになった。
病み上がりということもあって、俺は課長に家まで送ってもらうことになった。
「何から何まですみません、課長」
後部座席から運転席の課長の背中に言う。
「いやいや、いいんだよ。でも、いいのかい? 明日くらいは休んでゆっくりしたらいいのに。うちはそこまで忙しくないんだしさ」
「お気遣い有難う御座います。ですが、思ってたよりも身体は辛くないですし、俺も早く戻りたいんですよ」
「真面目だねぇ~」
「それだけが取り柄みたいなもんですから」
俺は、革靴の足の甲から爪先を覆うバンブという部分に仕込んだ物を取り出すために、靴を履き直す振りをしてそれを取り出した。取り出したそれはトランプの切れ端。
靴裏に何かを隠すことはあっても、まさか足の甲の方に隠しているとは誰も思わないだろう。
それを左拳で握り込んで心の内で唱えれば、車内が水で満たされる。
つまり、真実の目を発動したのだ。
今から弟に会うとなれば、慎重にならなくてはいけない。せめて、弟が能力者の目からは逃れられるように最大限に配慮しなければならない。俺は、いま能力者関連の事件を解決する部署にいるのだ。だから、犯罪を犯す能力者たちからは恨みを買うことだってあるだろう。毎日、弟のように能力を使っていれば、俺の身体はもたないに違いない。だから、普段は弟が使いどころを見極め判断した時にしか発動しない。でも、今はそうも言ってられない。弟は服部の件で、大分体力を消耗しているし、俺は俺で弟ほど賢くはないから。
「そういえば正人くん、服部のことなんだけど実は───────────」
「え……?」
***
「有難う御座いました! 明日からまた宜しくお願い致します!」
自宅マンション前に到着し、課長の車から降りた俺は、運転席に座る課長へ頭を下げた。
……マジかよ。
俺に向かって笑顔で手を振り、去っていく課長の車を俺はしばらく呆然と見つめていた。




