九拾七
6月15日(金)?時??分
かつてのオレたちは確実に闘いを勝ち残っていった。
時に険悪になりながら、
時に助け合って。
オレがこの状況から少しずつ情報を集めた結論は、
やはりオレは過去にこの闘いに参戦していたということだ。
結構衝撃的な事実だけど、覚えてないのはおそらく記憶を消されているか忘れさせられているからだろう。
どうやら合格発表の日からこの闘いは始まったらしい。
入学式よりも早くからオレたちは顔を合わせ、闘っては数を減らしていった。
今のオレたちと異なる点は、全員顔をさらしたまま闘っているところか。
後多少形式やフィールドも違っていたし。
ちなみに素顔のままとはいえ、夢での出来事は起きると同時にぼやけてしまうようだ。
ここもオレたちと違うな。
だから夢で誰かと闘っても現実では相手の顔の詳細までは分からない。
現実で報復しようがない、ってことだ。
なのに舞霞が現実で接触を図ってきたのでオレ(昔)は驚いていた。
会話を聞いた限りでは、舞霞もオレ(昔)のことはおぼろげにしか思い出せなかったそうだ。
だが何度も会ううちに一つ一つの特徴を覚えていき、その全ての特徴の一致したオレ(昔)を呼び出したと。
端から見たら一途な感じで、リア充爆発しろ的な感じだけど、
まあ一応オレ本人なわけだし、若干複雑なところだ。
そうそう、舞霞と現実で会ったときにはすでに闘いは終盤間近だったみたいだ。
どうも終盤戦は残り僅かな人数の中で三人組を作ってチームで闘うことになっていたようで、
夢でしか会えないのでは作戦もコンビネーションもない、ということでオレ(昔)を見つけ出したと。
なんか舞霞の行動力は目を見張るものがあるな。
まだあの舞霞との関係性が分かってないが、オレはこの舞霞に惹かれていった。
ちなみに三人組の残る一人はすぐに見つかった。
こいつも記憶にないけど、薫という男子生徒。
無愛想で無口でいつも睨むようにオレたちのことを見ていた。
薫の武器はグレートソードと呼ばれる大剣で、実力はオレたち二人よりも低いくらいかな。
実際に闘うシーンも近くで見ていたけど、彼はあまりやる気がないようだった。
チーム戦では舞霞が今のオレと同じように全方位に多節棍を伸ばして敵の行動範囲を狭め、
それを薫が1対1で倒す。
逃した相手はオレが機動力を生かして狩るというスタイルをとっていた。
舞霞は今のオレのように移動したり罠を張ったりといったことに多節棍を扱えてはいないようだった。
そしてオレ(昔)は鎌についた鎖を伸ばして罠を張るのはできたが鎖を複数にはできないみたいだった。
とうとう最後の闘いになった。
残った3チームでのつぶし合い。
そして残ったチームは今まで顔を見せてこなかったゲームマスター、
つまりこの¨神を堕とす者¨の首謀者と闘う権利を得る。
ゲームマスターを倒すことができれば三人の内残っていた全員の願いを叶えるということだった。
激しい攻防の末、オレたちのチームが勝ち残った。
何時間にもわたり闘い続け、最後の一人はオレの鎌が首を断った。
だが無傷とは言えず、満身創痍なオレたちには¨欠片¨も底を尽きかけていた。
そんなオレたちの目の前に現れたのが圧倒的な力を持った堕天使。
堕天使は重力を操りオレたちを無力化していった。
オレたちの一人でも死にそうになれば解放して逃がす。
完全に遊ばれていた。
絶望に包まれていたオレに最後まで笑顔を向けてくれていたのは舞霞だった。
オレたちのことを多節棍を使って重力の効果範囲からはじき出し、
堕天使の不意をついて全身を絡めとった。
鎖を伝って自らの重力をその身に受けた堕天使は鎖に全身を断裂される。
重力の鎧は消え去り、立場が逆転したオレは舞霞に走り寄った。
重力の暴走を間近でくらった舞霞は虫の息だった。
だが後は堕天使さえ倒せば現実に戻れる。
舞霞の夢も叶う。
オレは鎖に顔を抉られた堕天使の首に鎖を振り下ろそうとした。
トスッ
「え…?」
まるで隙間を通すようにオレの体の中を剣が滑る。
オレは胸から生えた刀身を見た。
振り上げた手から鎖鎌が落ちる。
カツン…
オレは首を捻って¨そいつ¨を見た。
闘いの中で助け合い、支え合ってきた¨そいつ¨を。
「…え…か、か…おる…?」
薫はいつも通りの無表情で一気に剣を抜いた。
支えを失ったオレの体が地面に転がり、穴の開いた体からは噴水のように血が噴き出す。
「…なん…で?」
「……。」
薫は一瞥すらしないで今度は舞霞の方に向かって歩いていく。
「…や…めろ、かお…る!」
薫は舞霞の傍らに立つと大剣を振りかざした。
「薫!」
だが薫の大剣が舞霞に触れることはなかった。
舞霞の全身にはすでに淡い光が包むように漂っている。
「…あ……。」
舞霞はもう限界だ。
一分も保たずに消えてしまう。
薫は踵を返して戻ってくると、とどめの一撃をオレの心臓に突き刺した。
途端にぼやける景色。
オレが最後に見たのは堕天使の体に大剣を振りかぶる薫だった。
(思い出した)
いつの間にかオレは昔のオレと同じ目線で世界を見ていた。
オレは全てを思い出した。
(薫、いや)
オレはあいつに復讐する。
(刈谷薫…カリヤ!!)
6月15日(金)?時??分




