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九拾六

6月15日(金)?時??分


告白から数ヵ月。


その間にはたくさんのことがあった。


詳しくは俺の胸の内に秘めておこうと思う。


客観的に見てもなんか恥ずかしいし、


てかあれとかこれとか赤裸々に暴露してしまったら俺のハートが保たんわ!


例を上げるなら、Kとのファーストキスとか。


……(───、)


それと俺はそれから一ヶ月後の世界と四ヶ月後の世界を見た。


一ヶ月後の世界は、俺とKが別れる時。


四ヶ月後は俺が


(プライバシー保護のため愛称で)


ちー(今の彼女)と本格的な関わりを持ち始める頃だ。


それらを見せられて、正直俺は釈然としないでいた。


Kの事あんなに好きで好きで仕方なかったのに、


受験終わってすぐちーと付き合ってるから。


なんか誰でもいいからKの代わりが欲しい、みたいな心理が見え隠れする。


俺、本当にちーのこと好きなのか?


それさえわからなくなってくる。


ちなみに、ポケットの中にはKのプレゼントの十字架のシルバーネックレスが入っていた。


どういった過程で手に入れたのか、気がついたら俺の胸ポケットにあった。


ポケットにいれておくと無くしそうな気がしたのでとりあえず身につけておく。


「制服にネックレスって合わないな…てかネックレスが勿体無いだろ俺なんかが着けてたって」


そう呟いてみるが周りには俺の声が届いている人なんていない。


今は記憶も終わりに近づいてきているのか、空白な空間にいる。


初めて鬼丸に触れた時のような全て真っ白な世界とは違う。


ここには俺の全てがあって、全てを感じられて、全て見ることができない。


見る必要がない。


俺は今まで見て見ぬ振りをしていた過去と向き合った。


手を伸ばして¨それ¨に触れる。


瞬間


(───っ)


世界が戻ってきた。


6月15日(金)?時??分


『…小僧!目を覚ましたか!』


「…鬼丸?」


目を開けると、一瞬だけ人影が見えた気がした。


だがまばたきと同時に人影は見えなくなり、傍らに鞘に収まった状態の鬼丸がいた。


『これより第三の試練を開始します』


見ると俺のすぐ横には【シュールバルタの鏡】があった。


今の鏡の言葉に鬼丸が反論している。


『どういうことだ!これから始まるのが第三の試練なら、今までのはいったい何だったんだ!』


俺は未だに夢を見ているような気持ちでそんな様子を見ていた。


「ねえ、鬼丸」


『なんだ?』


「俺、どれくらい寝てた?」


どうにも俺にはさっきまでの数ヶ月間は長い夢のように感じられた。


『だいたい5分くらいだ。小僧、何ともないか?』


「…そっか」


俺は鬼丸の質問には答えず、ただぼうっとしていた。


5分


あれだけ長い記憶を見ていたのに5分か。


なんだかまだ夢を見ているようだ。


不思議と俺の中でくすぶっていたKへの気持ちが少しだけ落ち着いていた。


「ねえ」


未だに続いている鬼丸の抗議の合間を縫って鏡に聞いてみた。


『なんでしょうか?』


「この試練にはあれが必要だったの?」


『はい』


「理由は教えてもらえる?」


『お答えできません』


「そっか」


俺は起き上がって体の調子を確認する。


どこにも異常はない。


ただ少しぼうっとしてるくらいだ。


「じゃあ後半もお願いします」


『承知致しました』


鬼丸が何か言っているが、俺は無視して鏡を通り抜けた。


すると


「久しぶり」


「…うん、久しぶり」


目の前にはKがいた。


俺はKに向かい合う。


「少し、話をしようか」


「…うん」


今度は俺の方から話しかけてみた。


今回の試練は今まで以上に難しそうだ。


俺はいつの間にかあったネックレスを強く握って、Kの方をしっかりと見据えた。


6月15日(金)?時??分

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