九拾五
6月15日(金)?時??分
3年1組に戻ったおれ(小)は何事もなかったように給食を食べている。
おれは懐かしさから校内を眺め回しながらもおれ(小)を観察する。
表情はあまり豊かじゃないが、先ほどみた能面のような無表情よりはだいぶましだ。
何人かのクラスメートとは会話もしている。
てか懐かし!!
小さくて幼い顔立ちだけど何人かには見覚えがある。
まあ今も付き合いがあるやつなんてほとんどいないけどな!
けどヤバい。
何人かお持ち帰りしたい。
うわ、あいつこれくらいのときはこんなにつぶらな…
あ、あいつはたしか今タバコとか吸ってバイク転がしてる不良じゃん(笑)
あの人は…
まあこんな感じでヤバい。
なんかもう、ヤバい。
給食が終わって昼休みになった。
教室にいた生徒のほとんどが外に遊びに出て行った。
おれはぽつんと一人だけ椅子に座って本を読んでいる。
(そういえば本ばっか読んでたな~)
ずっとこんな調子だったから記憶も曖昧なのかもしれない。
すると近づいてきた男子生徒がおれ(小)にちょっかいをかけてきた。
こいつは…
名前は思い出せないけど、確か男子のグループの中でも結構ウザいやつだ。
岡村とか村上そんな感じの名前だったか?
まぁMでいいか。
M(仮)はおれ(小)の机の前まで来ると読んでいた本を奪った。
覚えている限りでこいつは確かにこんな感じにウザいことばっかりやってた。
本をとられたおれ(小)は目を細めてMに返すように言っている。
しかしMはふざけた口調で挑発するばかりで本を放さない。
するとおれ(小)は突然立ち上がってMを殴りつけた。
悲鳴を上げるMと教室に残っていた生徒。
(ちょっ!)
いくらなんでも手が出るのが早過ぎる。
ちょっととられて言い返してきただけで殴るとか…
しかも一発殴っただけでは収まらず、おれ(小)は机を弾き飛ばしてMに近づき、体重を乗せた蹴りを何発もお見舞いしている。
「近づくなよ、ガキが」
Mが泣き始めたところでおれ(小)は蹴るのを止め、見た目に合わない低い声でそう言った。
そういえばおれは小学三年生くらいで早めの変声期を迎えたんだっけ。
周りよりだいぶ早く声が変わってしまったため、話したり歌ったりするのが嫌になったのは覚えている。
泣きじゃくるMには見向きもしないで、おれ(小)は本を拾い上げた。
そして机と椅子を直すと読書を再開する。
騒ぎを聞きつけてやってきた先生はこの惨状に唖然としていた。
そんな毎日が何日も続いて、ある日突然なくなった。
思い出せる限りで言うと、おれは小学校入学当初から喧嘩が絶えなかった。
理不尽な教師からの決めつけ。
友達の嘘や裏切り。
早生まれのせいで大きな体。
そんな要素が混ざり合い、おれは高学年になるまでは喧嘩や暴力が絶えなかったのだ。
地元に不良が多かったのもある。
タバコこそ吸わなかったが、おれの左手の甲には未だにその頃の根性焼きの痕がある。
家庭環境も原因の一つだろう。
しつけに関してはだいぶ厳しかった母は、おれの体にビシバシ常識やマナーを叩き込んだ。
おまけに要領のいい兄や弟がいて、さらに母とは反りの合わなかったおれは反発しまくった。
高校の今でも母に反発しているくらいだ。
おれは溜まるに溜まったストレスを周りに当たり散らすことしかできなかった。
剃り込みを入れた部位だけ髪がパーマのようにになってしまったのは自業自得だが。
ともあれそんなおれをどうにかするために学校側は大人だけで話し合い、家庭環境を変化させることになったらしい。
小学生には重すぎたストレスは少しずつ減らされ、改善を重ねられ、
小学校を卒業するころにはおれは喧嘩も暴力も嫌いな少年になっていた。
喧嘩しなくなったのは五年生の時にメガネをかけ始めたことも大きい。
以来おれは無類のメガネ好きだ。
……。
まあこうしておれは早送りのように小学生時代の記憶を辿っていった。
次第に忘れていた記憶を取り戻しながら。
思い出さないようにしていた記憶を呼び起こしながら。
そうしてたどり着いたのが中学生時代だ。
6月15日(金)?時??分




