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九拾一

6時15日(金)?時??分


気がつくとオレは学校にいた。


今通っている稲穂学園ではない。


「ここは…」


[北海国際高校]。


稲穂に来る前にいた学校だ。


ここはそのときのオレの教室。


窓から見た景色はすでに薄暗い。


時計はちょうど5時半になるところだ。


まだ暗くなるような時間帯じゃない。


「えっと、なんで?」


確か第三の試練を受けるために鏡を抜けて…


どうしてオレはこんな所にいるんだ?


「舞霞、これっ…?」


舞霞の気配がない。


いつも実体化していなくても舞霞の気配が消えることも、


返事が返ってこないこともなかった。


「舞霞!」


少し大きめな声で呼んでみてもまったく反応はない。


「どうなって…」


「到ちゃ~く♪」


疑問を遮るように、教室の入り口から女子の声がした。


見てみるとそこにはオレと同じくらいの少女がいた。


きれいな長い黒髪を一つにまとめてポニーテールにし、活発そうな笑みを浮かべている。


ぱっちりとした目をしていて、少し意志の強そうな印象を受ける顔立ちをしているが、とても可愛らしい。


ちょうど美しいと可愛いの中間あたりだろうか。


アイドルほどの派手さはないが、不思議と惹かれる見た目だ。


美人にも可愛い系にも化ける大輪のつぼみというか。


髪型もサイドで髪が垂れ下がっている感じがなんとも…


身長はオレより少し低いくらいかな?


服装は冬物で、ぴっちりしたジーンズをはいていて、


上は薄手の上着を着ている。


オレは今の季節に合わないことに気がついた。


「あ、えっと、ねえ。君…」


オレは勇気を出して教室を見渡す生徒とおぼしき女子に話しかけてみた。


「あれ、まだ来てないんだ。もう、裕ちゃんたら時間厳守って言っておいたのに」


だがそれを完全に無視して女子生徒はため息をついた。


てかオレのほうを見向きもしない。


って、今なんか気になる単語が混じってたような…


その時教室に飛び込んできた人物を見て、一瞬オレは唖然とした。


「ごめん、霧島さん!待った?」


「遅いよ裕ちゃん!約束は5時半って言ったじゃん」


飛び込んできたのはオレだった。


何も反応できないオレの前でもう一人のオレと、霧島と呼ばれた女子生徒との会話は続く。


「いや、でもまだ2、3分しか…」


「言い訳はだめ。女の子を待たせた罰として、帰りにケーキをおごってもらいます♪」


「ねえ!ちょっと…」


「え~!そんな殺生な…」


オレが話しかけても二人とも反応しない。


もしかしてオレのこと見えてない?


試しに近づいていって目の前に立っても何の反応も返ってこなかった。


「男の子なんだから当然です!それと私のことは¨舞霞¨って名前のほうで呼んでって言ってるでしょ?」


舞霞!?


舞霞ってあの舞霞のこと!?


「いや、だって。まだ初めて会ってから3日しか経ってないのにいきなり名前とか」


「いいじゃない。高校生なんだし、いつまでも名字で呼び合うなんて他人行儀でしょ?」


「それはそうだけどさ。でも裕ちゃんは止めてよ」


「なんで?」


「なんでって…」


二人の会話は続いていく。


だがオレは目の前で起きているこの状況に何もすることができなかった。


6時15日(金)?時??分


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