九拾
6月15日(金)?時??分
『第二の試練、クリアです』
「よっし!」
『やったね、裕ちゃん!』
多少手間取りながらも、オレは順調に第二の試練を突破することができた。
鏡を通り抜け辺りを見渡してみるが、二人の姿は見えない。
(まだクリアできてないのかな?)
それかもしかしたら次の試練に行ってしまったのかもしれない。
鏡の中では時間の流れが異なるし、オレが第二の試練を受けている間に第三の試練が終わり、次の第四の試練に進んだ可能性は十分にある。
逆もしかり。
『裕ちゃん、お疲れ様』
「ありがと。舞霞もナイスアシスト」
今回もまた舞霞に助けられた。
やはりどうしても多節棍は扱いが難しいから、舞霞の微調整はまさしく命綱だ。
『そんなことないよ。裕ちゃん、どんどん強くなってきてるし、もう教えてあげられることもあんまないね』
舞霞が少し寂しげにそう言ってきたため、オレはちょっと強めに言いかえしておく。
「じゃあまた新技の構成練っておいてよ。舞霞の考えてくれた技ってどれもしっくりくるし、技が増えれば幅も広がるし」
『え?あ…うん!すごくてカッコいいの考えておくね!』
一回この闘いに疑問を持ってから、前よりも舞霞の気持ちが理解できるようになってきた。
舞霞はオレがこの闘いに参加していることに反対のようだ。
表立ってそう言ってきたり、言葉にしたことはないが、
時々舞霞の気持ちがオレに伝わってくる。
何を考えているかまでは分からないが、躊躇う気持ちや案じてくれている気持ちは痛いほどに響いてくる。
なんかこう、彼女とかがいたら、こんな感じなのかな~と、思えてくる。
『裕ちゃん?』
「え!?あ、ごめん。楽しみにしてるよ。それじゃ、次の試練に進もうか」
二人ともオレよりも早く第三の試練に進んでるし、とりあえず追いつこうかな。
『第三の試練を開始しますか?』
「はい」
『頑張ろうね、裕ちゃん』
舞霞の声援を聞きながら鏡を通り抜けて、一瞬の暗転の後に、オレの意識は途切れた。
6月15日(金)?時??分
「……。」
開始からいったいどれだけの時間が流れただろうか?
生徒達がいる空間とは違う空間でデュランという少女は疑問を浮かべる。
と言ってもデュランはあまり頭を使うタイプではないため、(暇だな~)程度の考えだったが。
今デュランがいるのは体育館ほどの広さの鏡に囲まれた空間。
開始直後は面白がって自ら【シュールバルタの鏡】の試練を受けていたが、
わずか30分で制覇して以来、暇そうに他の鏡を覗いているだけである。
試練の途中強制的にカリヤに他の生徒の鏡に投げ込まれたことで興奮していたが、
飽きっぽい性格のせいで今は暇を持て余している状態だ。
一方カリヤは終始無言で全ての生徒の動向を観察している。
たまに鏡の中で行われている試練に間接的な影響を少しずつ与えて矯正していく。
「なあカリヤ~!何かすることない?」
「……。」
「むー!てゆーかなんでこんなに時間かかってんの!?意味分からねー!
こんな簡単な試練ちゃちゃっと終わらせればいいのにな!」
「……。」
話を振っても無反応、というか無視しているカリヤにデュランがキレる。
「無視すんなよ、カリヤ!」
生来激しい性質を持つデュランはあっさりと身の丈ほどの大剣を出現させる。
「少しは構え~!!」
瞬く間にカリヤとの距離を詰めたデュランは残像も残さずに大剣を振るった。
「……。」(スッ)
それを振り返ることなく避けたカリヤは、デュランの進行方向に鏡を出現させる。
「え?うわっちょ…」
鏡の中に消えていったデュラン。
「……。」
カリヤは無言で作業を再開した。
6月15日(金)?時??分




