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八拾九

6月15日(金)?時??分


「いや~まさか…」


宮崎は目の前で倒れている¨それ¨を見た。


『……。』


¨それ¨はまるでマネキンのように倒れたまま動かない。


「お~い」


『……。』


「返事がない。…ただの屍のようだ(どや)」


『……。』


「あー、うん」


『……。』


「ジミー~!!」


宮崎の目の前に倒れているのは¨中途半端に実体化している¨ジョージの裸体。


宮崎が鏡をくぐり抜ける際に出現させておいた斬馬刀。


中途半端に人格が目覚めてしまったせいか、先に全身を鏡の向こうに出してしまったジョージの精神が¨永久の迷宮¨へと入り込んでしまっていた。


「どうしてこんなことに…。ま、とりあえず準備運動でも…」


ついには軽く現実逃避し始めた宮崎の傍らにはトンファー。


『ふむ。おぬしはいつも運が悪く災難に遭いやすいというのに、ここぞというときには強運だのぅ』


呆れたように呟くトンファーに準備運動をしながら宮崎が尋ねた。


「なんかよく飲み込めないんだけどさ。もしかして第三の試練を受けるためにはジミーみたいにならなくちゃいけなかったのかな?」


『その通りです』


『¨鏡¨の…。どういうことか説明願えるかの?我の知る限り、今回はちと試練の中身が違うようだが』


トンファーは実体化しないで、地面に転がったまま問いを発する。


『はい、全てはマスターのご指示です』


「マスター?」


『なるほど、それでか。ならばこの場合どういった¨規則¨が設けられておる?』


『第三の試練は精神のみで行っていただきます。


ですが、マスターは¨合わせ鏡¨を回避した場合十分合格だ、とおっしゃっておりました。


よって、あなた方は第三の試練突破でございます』


「ちょww」『なんと…』


『もちろんこのまま第四の試練にお進みいただいても構いませんが、


お望みでしたら第三の試練を受け直すことも可能です』


「それって、もし試練をクリア出来なかった場合は?」


『その場合一度この空間に出ていただき、その後もう一度チャレンジいただけます。


ただしその場合クリアは帳消しとなり、また第一の試練からやり直していただきます』


「リタイアはないのにクリアできないとかあるんだ?」


『この場合のリタイアとは、身も心も戦闘不能になるか、一年以内にクリアできないことを指します』


「うっわ、えげつなwwリタイアなしでどうやって試練突破すんのかと思ってたら、そんなルールがあったんだ(汗)」


『もちろん自らの意思でのリタイアはありません。


体が使い物にならなくなった場合も、精神が生きているならば永遠に、


と言っても一年ですが、闘い続けていただきます』


【シュールバルタの鏡】の言葉に考え込む宮崎。


『常春よ、別に悩む必要はあるまい。このまま第四の試練に進んでしまえばよいではないか』


「ん~(‐ω‐)


でもさ~、おれってテトリスとかまとめて一気に縦棒で消したい派なんだよね(笑)


こんな偶然で第三だけ抜けるとか、なんかムズムズすんだよな~」


そう言って宮崎は自らの体を両腕で抱きしめながらクネクネし始める。


端からみたら完全な変質者だ。


「よし、受けるわ(笑)」


『常春!?』


『了承しました。では改めて¨合わせ鏡¨の中央にお進み下さい』


「了解了解ww…あ、ジミー拾っていい?」


『どうぞ』


倒れているジミーを無理やり斬馬刀の形に戻し、宮崎は出現した¨合わせ鏡¨に向かって歩を進める。


『常春よ、なぜそんな無駄なことを…』


トンファーは理解できなさそうに呟く。


宮崎はトンファーを拾い上げながら答えた。


「その場の運や持って生まれた才能で勝つのってどうしても嫌いなんだよ。


もちろん才能があるからって努力してないわけじゃないんだけどさ、


それでも努力しても勝てないし掴み取れない凡人が運や才能の前に敗れるなんてのはざらじゃん?


それがどうしても許せないんだ」


宮崎は珍しく真面目な口調でそう言った。


「おれは¨運¨や¨才能¨だけの勝利は認めない。」


言い終わると同時におかめの仮面が漆黒に染まる。


「¨運¨も¨才能¨もいらないし持ってない。おれはただこの体だけを使って勝ってやる」


そう言い終えると同時に宮崎の全身が鏡に写り、糸の切れた人形のように倒れ込んだ。




宮崎常春、第三の試練開始


6月15日(金)?時??分



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