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八拾六

【鉄扇:全長18~45cm。重量0.4~1.5kg。日本(17~19世紀)。鉄扇はもちろん戦場で使われた武器ではなく、江戸時代に手遊すさびとして携帯されたものである。鉄扇には、スライドさせ広げて扇としても使えるものと、閉じた状態を模した単なる鉄塊の二つのタイプが存在する。】


6月15日(金)?時??分


ガガガガッキィンッ!


絶え間ない攻防がすでに5分以上続いている。


俺はパティッサ遣いの攻撃をある程度余裕を持っていなしていくが、それでも決定打を決められずにいた。


パティッサ遣いの体に入った【パティッサ】はまるで鬼神のような気迫で迫ってきている。


鬼丸との浅からぬ因縁もそうだが、前回鬼丸に瞬殺されたことを根に持っているようだ。


直接言葉は交わしていないが、殺気の強さはますます上昇していく。


だがそれでも修行と実戦で鍛えた俺の方が実力は上だった。


以前はまったく見えなかったパティッサ遣いの縮地も、今や終始目で追えている。


実際後一歩のところまで追い詰めることには成功していた。


だがそこで邪魔してきたのが【鉄扇】遣いだ。


5分を経過すると同時に俺とパティッサ遣いの闘い乱入してきた。


まったく見覚えはないが、おそらくこの子が鬼丸が言っていた相手だろう。


あの遊園地で俺が気絶している間に倒したと言う対戦者。


(でもまさか女の子だったなんて…)


鉄扇を軽々と振るってくるのは小柄な女子生徒で、パティッサ遣いを相手しながらだと少々手に余る。


150cmほどの身長でちょこまかと動き回られているせいで、パティッサ遣いとの闘いに集中できない。


しかもたまに身軽な攻撃を仕掛けてくるせいで、受けた腕や脚には打撲の痛みがジンジンしている。


(こうなったらこの鉄扇遣いから…)


幸い二人を相手していてもそれほど苦ではない。


それだけ実力がついていたらしい。


だが長引けば、油断すればやられてしまう。


まだ余力のあるうちにまず鉄扇遣いから片付けよう。


「来い、《小刀 椿姫》!」


先ほどまで闘っていた【椿姫】。


実際に闘ってみたことでなんとなく性格が感じられた。


(そういえばこの四人の中でもこいつだけ殺意がなかったな…)


【椿姫】を使った二刀流¨朧雪¨。


それを俺は¨あの技¨と組み合わせる!


「《双龍閃そうりゅうせん朧雪(おぼろゆき)》!」


鉄扇遣いはもう俺の間合いの中に入っている。


《双龍閃》は本来飛◯御剣流の二段抜刀術だ。


一撃目を刀で、ニ撃目を鞘で放つ。


この技には隙がほとんどない。


そしてこれを鞘ではなく二刀目の【椿姫】で行えば…


ガィンッ!ザシュッ!


鞘の二つを最初に目眩ましに使い、そして連続の斬撃。


鉄扇を開いて一撃目を受け止められたが、鞘で隠されていた【椿姫】が鉄扇遣いの胸元を深く斬りつける。


傷跡からは大量の血が噴き出し、心臓を両断したことを伝えてきた。


これだけじゃ終わらない。


この技は《双龍閃そうりゅうせん(いかづち)》に繋がる。


双龍閃の応用技である《双龍閃・雷》は、一撃目を鞘で放つことにより相手のガードを崩し、ニ撃目の本撃でノックアウトする。


《双龍閃・朧雪》は2つの技を組み合わせ、さらに二刀流でアレンジしたもの。


目眩ましに使用した鞘の一歩を空中で掴み、回転を利用して今度はパティッサ遣いに向かって投げる。


その際右手に持っていた鬼丸は空中へ。


鞘を弾いたことで動きが止まったパティッサ遣いには続いて【椿姫】が迫る。


【椿姫】の一撃が浅く胴を横なぎに通り、それを手放して空中の鞘を取る。


端から見たら宙に浮いた二本の刀と鞘をジャグリングしているような格好だ。


一撃ごとに武器を手放し、先ほど手放した武器を取って攻撃する。


まさしく飛◯御剣流と鬼丸の《朧雪》のコラボ技。


パティッサ遣いは16撃目でとうとう膝をついた。


そして俺はとどめの一撃を鬼丸で差す。


パティッサ遣いは最後までパティッサを手放さなかった。


『第二の試練、クリアです』




阿部佑樹、第二の試練突破


6月15日(金)?時??分


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