八拾四
6月15日(金)?時??分
『第二の試練。汝過去の宿敵と再び合間見えよ』
くぐり抜けると同時に鏡はそう言葉を発した。
「過去の宿敵?…!」
呟いた瞬間、気がつくと俺を囲むようにいくつもの人影が存在した。
辺りを見渡してみると四人の生徒が微動だにしないで立っている。
全員相当な手練れなようで、無駄な気配が全く感じられない。
『とんでもない殺意だ…。こいつは普通の参戦者に出せる殺気じゃねえ…!』
一人一人からは異常なくらい殺気が送られてきている。
まるで質量を持っているかのごとく俺の体を圧迫し、チリチリとした感覚で全身が総毛立つ。
『第二の試練では、これまでに討ち果たしてきた対戦者と再び闘っていただき、そして残らず倒していただきます』
そう言われて一人の生徒をよく見てみると、その男子生徒が持っているのは¨椿姫¨だった。
「もしかして、予選で俺が倒した奴、か…?」
改めて他のやつも見てみたが、全員今までの闘いで倒した奴ばかりだ!
一人残らずとんでもない威圧感だが、中でもひときわ強い殺気を放ってきているのはパティッサ遣いだ。
だが見た感じ様子がおかしい。
『なお、これらはあなたの記憶を¨映した¨ものではありません。
¨本人¨そのものの存在を¨映し¨、その者が所有していた【神器】の存在の¨写し¨を融合させてあります。
よって、これらはあなたがかつて闘った者の記憶と【神器】本来の力が反映されております』
そんな無茶苦茶な!
てことはあいつらは前見た鬼丸のようにとんでもなく強いってことかよ…
俺がそんな考えを見透かしたように、鏡は説明してくれた。
『ご安心を。あくまで実力はあなたが倒した時点とそう大差ありません。
あの時点の実力で、【神器】自身が闘うということです』
つまりとんでもなく強い本体が弱い俺らの体を操るってことか。
それにしても鬼丸が俺の体を使ったときだって半端じゃない。
『それでは用意はよろしいでしょうか?闘う順番は今までに倒した順番です。
そして5分ごとに一人ずつ参戦していきます』
つまり速攻で倒さないと、最終的には全員を同時に対処しないといけないのか…
『制限時間はありません。それでは第二の試練を開始します』
そう鏡が宣言した途端、¨椿姫¨を持った男子生徒が迫ってきた。
6月15日(金)?時??分
開始からすでに4分は過ぎている。
素早い動きで翻弄してきた椿姫遣いだったが、予選とは俺も実力が違う。
上回るスピードで椿姫遣いに追いつき、そのまま¨椿姫¨を破壊した。
どうやら倒すための条件は同じようで、【神器】を破壊すれば勝ちのようだ。
一分とかからず倒せたおかげでほとんど疲れていない。
後数秒で今度は朴刀遣いとの闘いに突入するが、この様子だとあまり苦戦はしなさそうだ。
一つ懸念があるとすれば、あのパティッサ遣いだ。
俺と闘った時点でだいぶ実力に差があった。
今は俺の方が強くなっているはずだが、油断はできない。
ちょうど5分経ったようだ。
朴刀遣いが一歩踏み出してきた。
俺はパティッサ遣いとの闘いに備えるため、少し控えめにいくことにした。
6月15日(金)?時??分
「はあ!」シュバッ!
鋭く放った一撃が朴刀遣いの右腕を肩のあたりから切断する。
朴刀遣いは声も洩らさずに膝をついて傷跡を抑えている。
すでに朴刀遣いの体はボロボロだ。
回復する暇も与えず全身に切り傷を作り、もう立ち上がる力も残っていないだろう。
俺はそれでも容赦なく朴刀遣いの首を一息に切り落とす。
スッ
音もなく胴体から離れていった頭部は地面に落ちる前に淡い光となって消えていった。
少し手間取ってしまった。
だが5分以内で倒すことはできたはずだ。
いったん鬼丸を鞘に収めて構えを解いた。
次の瞬間
「!」ガィンッ!
かすかな殺気に反応して収めたばかりの鬼丸を抜く。
すると背後からの一撃とぶつかり、激しい金属音と火花が散った。
どうやら朴刀遣いとの決着が思ったより長引いていたらしい。
俺は距離を取ったパティッサ遣いと正面から向かい合った。
6月15日(金)?時??分




