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八拾二

6月15日(金)?時??分


「あ、お~い!こっちこっち」


「ぎやま?」


鏡を抜けてすぐに、離れた位置に座っていたぎやまが手を振って俺を呼んでいた。


周りにはいくつもの鏡が並んでおり、見渡すとぎやまの他にも何人か座ったり横になって休憩しているようだった。


「阿部君も第一の試練クリア?」


近づいていくとぎやまは小声でそう聞いてきた。


離れているとはいえ、他の生徒に聞かれたらマズいからだろう。


「ああ、うん。ちょうど今終わったと…ってつね!どうしたの?」


鏡の陰で見えなかったが、ぎやまの横には満身創痍のつねが横たわっていた。


制服のズボンはボロボロで、ワイシャツは右腕に纏わりついているだけでほとんど残っていない。


かすかに開いたり瞼からは虚ろな瞳が空を見上げている。


生きてる証拠にゆっくりと胸が上下しているが、半分ほど死にかけていると言ってもオーバーな表現ではないだろう。


おかめの仮面も半分以上砕けて素顔が覗いているくらいだ。


ぎやまはうまい具合に周りからつねを隠していたようだ。


慌てる俺を制して、ぎやまが説明してくれた。


なんでもぎやまは試練をクリアしたはいいが、第二の試練に臨む気力が沸いてこなかったらしい。


どうやらぎやまも激しい戦闘があったらしく、なんとなくくたびれている。


体を休めて¨欠片¨を回復させていたぎやまだったが、すぐ近くの鏡からつねが飛び出してきて介抱していたそうだ。


とりあえず命に別状はなさそうだと判断してすぐに今度は俺が鏡から出てきたと。


「なんか鏡の中だととくに時間の流れが遅いみたいだよ。あんま他の参加者が出てくる間隔に幅がないし」


ぎやまは鏡の中にだいたい4時間いたそうだ。


俺は半日以上いたはずだし、確かに流れが遅くなっているようだ。


『第二の試練を開始しますか?』

「うわ!」


突然背後から声をかけられて驚いた。


声の主は【シュールバルタの鏡】だった。


そういえばぎやまに呼ばれて忘れていた。


まだ試練は一つしかクリアしていない。


だがこのまま二人を置いて先に試練を受けるのも…


まだつねの意識は戻っていないし、ぎやまに任せきりではいられない。


ピシリ


その時つねの体から何かが割れるような音が響いてきた。


見るとつねの体にはひびが入っていた。


「宮崎君!」「つね!」


ひびは全身に広がり、突然内側から弾け飛んだ。


「うあぁあぁぁぁぁ!!」


砕けた皮膚の下からは無傷のつねが現れた。


驚いたことにボロボロだった制服も直っている。


「ぁぁぁ…ん?あれ…?」


つねは周りを見渡して状況を確認すると、近くにいる俺とぎやまに気がついたらしい。


「ゴ…、…ジョニーさんは?」


なに言ってるんだ?


とりあえず試練について聞いてみると…


「ゴ…、ジョニーさんの大群に襲われて、高いとこに避難したんだけどずり落ちて、ジョニーさんに呑み込まれた!と思ったら今に至る」


何のこっちゃ…


てかジョニーさんて誰だよ


つねに聞いてみても「言霊信仰というもんを知らんのか!」となぜかキレられた。


まあとりあえずつねも無事みたいだし、試練の続きを受けてくるかな。


なぜか鏡の裏や近くの物陰を挙動不審に覗き込んでいるつねをぎやまに任せ(押し付け)、俺は鏡に向き合った。


「とりあえずよろしくお願いします」


『鏡を通り抜けて下さい』


俺はぎやまに一言声をかけてから鏡に踏み出した。




第二の試練。汝過去の宿敵と再び合間見えよ


6月15日(金)?時??分


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