七拾八
6月15日(金)?時??分
「ふうぅうぅぅぅぅぅ…」
集中する俺の周りを空気が層になって渦を作る。
『イメージしろ、小僧。とにかくイメージだ。ありったけの¨欠片¨を集中させろ』
俺は広場から程近い物陰で一つのイメージをしていた。
今のままではあの数のガナードは倒しきれない。
一体一体相手をしていては俺の方がガス欠を起こしてしまう。
ならばどうすればいい?
少ない力で最大の結果を生み出せばいい。
元々武芸やら剣術というのは無駄を最小限までなくした者が勝つ。
同じ実力ならより無駄のないほうが勝つ。
まぁ一概には言えないけど。
鬼丸の教えてくれる技は少ない力で無駄なく最大級の破壊力を生み出すものだ。
それを発展させれば、実力以上の破壊力も生み出せるはず。
イメージすると
例えばダイナマイト。
あれは単純に火薬の量を増やせば破壊力は増す。
でもいくら破壊力が増しても、ただ正面から爆破したところで威力が拡散してしまい対したダメージは与えられない。
でも外国ではダイナマイトを対象の最も弱い位置に効率よく配置して爆破する。
弱点を突かれた対象は簡単に破壊されてしまう。
結果的に使ったダイナマイトの火薬は少なくて済み、払う犠牲も最低限のもので済む。
まあ俺が今やっているのは厳密には今の例えとは違うけど。
むしろダイナマイトの例えとは正反対かもしれない。
ダイナマイトは小分けし、急所に配置して最大限の結果を出す。
逆に俺は全ての¨欠片¨を一瞬で消費して一点に集中させる。
6月15日(金)?時??分
ドクン
イメージに集中し始めてから約10分。
俺の中の¨欠片¨はちょうど胸の中心あたりで一ヶ所に集められている。
心臓の鼓動にあわせて脈打っているのがわかった。
後はこいつを一気に、一点に集中して放てばいい。
それで広場のガナー◯と、うまくすればサ◯ラーも仕留められるはずだ。
鬼丸は最初これを居合いの要領で放たせようとしたみたいだが、こんなぶっつけ本番でそんな高度な技を成功させられるわけがない。
だから俺はとある技のイメージとともにこの¨欠片¨を放とうと思う。
イメージは何度もしたし、それに技自体幾度となく見ている。
後は俺自身のメンタルの問題だ。
こいつを外せば、おそらく俺は動けなくなる。
そうなったらガナー◯に一斉に襲われてしまうだろう。
だから失敗は許されない。
俺はサ◯ラーのフードに隠された顔のあたりから目を離さず、タイミングを計る。
そして俺は一気に¨欠片¨を解放しようとした。
しかしその瞬間、俺達の目の前にガナー◯が現れた。
広場に目を向けていたため、脇から近づいてくるガナー◯に気がつかなかった。
不意を突かれた俺は、思わず全力で¨欠片¨を解放してしまった!!
6月15日(金)?時??分
『よせ!!』
鬼丸の制止の声が響いたときには全てが遅かった。
溜めるに溜めた¨欠片¨の一撃は一瞬で目の前のガナー◯を消し去り、背後の建物をまとめて呑み込んだ。
「あ…」
跡形もなく吹き飛んだ景色は、広場から僅かにズレていた。
見晴らしのよくなった俺と広場の間は、すぐに向かってくるガナー◯で埋め尽くされる。
俺は反動で動くことのできないまま、ただ迫り来るガナー◯の大群のことを眺めることしかできない。
先頭のガナー◯がその腕を振り上げ、頭に振り下ろしてくるのを見て、俺の中で誰かが叫んだような気がした。
ドクン
瞬間、俺の中で¨光¨がはじけた。
6月15日(金)?時??分




