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七拾六

6月15日(金)?時??分


『裕ちゃん、ちょっといい?』


重力の弾丸の狙いを交わすためにいくつかの角を曲がったとき、舞霞が聞いてきた。


「なに?」


オレは今曲がったばかりの角から堕天使がまだ追って来ているかを確認しつつ返事をする。


どうやら撒いたようだ。


…安心はできないけど。


『さっき裕ちゃんとシンクロしてみて分かったんだけど』


舞霞はそう切り出してきた。


シンクロ?


そういえばさっきいきなり頭がクリアになって体が軽くなったような…


『たぶんあの堕天使、どうにかできると思う』


「本当?」


シンクロ云々は置いといて、あんな化け物をどうにかって…


『うん。それで裕ちゃんにお願いなんだけど…』


言いにくそうな様子で舞霞が言う。


『ちょっとだけ裕ちゃんの体、私に貸して?』


6月15日(金)?時??分


街の中央にある大きな教会の鐘の上。


そこでオレは、いやオレたちは堕天使が近付いてくるのを待っていた。


「なんか男の子の体って堅いね。それに裕ちゃんって着痩せするタイプ?」


今の状況をなんて説明したらいいのかうまい表現が見つからない。


今、オレの体は舞霞の意識が入り込んだ、ちょっとした多重人格状態だ。


強いて言うなら飛行機のパイロット?


オレがメインの操縦士で舞霞がサブみたいな。


今は舞霞が主体でオレの体を操っている。


舞霞たち【神器】は意識のない所有者の中に入り込んで動かすことができるらしい。


まぁ意識がある場合は承諾されないとダメみたいだけど。


ちなみに後で聞いたのだが、稀に所有者の意識を強制的に乗っ取る呪われた【神器】もあるらしい。


そういった【神器】は曰く付きなものが多く、世界的にも逸話や伝説が残っているそうだ。


それはさて置き、何故舞霞がオレの体を操っているのかと言うと、


なんでも今のオレでかろうじて扱える技を強制的に体に覚えさせる、のだそうだ。


「別に、普通じゃない?てか着痩せって…普段鍛えたりしてないからプニプニなだけだし」


発言は舞霞と交互に。


もともとはオレの体だし、強く念じればおそらく体はオレの支配下に戻ると思う。


端からみたら独り言をぶつぶつ呟く不審者だな。


しかもおかま口調…。


「いやいや、結構鍛えたりしてるんじゃない?なんかこう、男の子してるし」


男の子してるって…


オレが言い返そうとすると、タイミングよく堕天使が姿を現した。


「来た…」


どっちがそう言ったのかは分からない。


オレと舞霞はどちらともなく呟いた。


「本当にあいつをどうにかできるんだよね?」


オレが不安になってそう聞くと、自信のある返事が返ってきた。


「大丈夫、私に任せて」


体を共有しているわけだから、ある程度感情や思考も共有できる。


確かにあれをどうにかする自信はあるようだが、いったいどうするんだろう?


堕天使は今まさに教会の敷地に踏み込んだところだった。


6月15日(金)?時??分


「しっかりこの感覚を覚えておいてね」


舞霞はいたずらっぽくそう呟いて、躊躇なく鐘の上から飛び降りた。


右手には通常モードの多節棍のみ。


分解せず、ただの棒のままだ。


舞霞は空中でいったん目を閉じ、多節棍を強く握りしめて一直線に堕天使に向かって落下していく。


そして堕天使が舞霞の姿を視界に収める直前、体の中で¨欠片¨が大量に蠢いた。


「はあっ!」


両手を通して流れ込んだ¨欠片¨は、多節棍に浸透し舞霞のイメージ通りに融合する。


そして舞霞は¨欠片¨と同化した多節棍をさらに変化させた。


多節棍の端に鎖で繋がった錘。


それが元の数十倍から数百倍の大きさに巨大化し、堕天使を頭から押し潰した!


「いくら超重力で防御してたって、その向きは一定なんでしょ?」


圧倒的な質量で堕天使ごと地面を大きく凹ませ、その錘の上に着地して舞霞は言った。


「だったらその向きに合わせて攻撃すればむしろ強化されるに決まってるじゃない」


舞霞は力強く、勝利を確信した様子で宣言する。


舞霞かっけー!!


たぶん体が自由だったら思わずガッツポーズを決めてたかもしれない。


6月15日(金)?時??分

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