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六拾六

6月8日(金)28′12″11


「って、うわっ!」


俺達の惨状が目に入ったらしい。


「二人とも大丈夫!?」


どうやらどんな結果になるのかは考えていなかったらしい。


どんな修行をしてきたのかは知らないけど、人間相手に放ったのは初めてのようだ。


俺は膝をついたまま体の状態をチェックしてみた。


幸い致命傷はないようだ。


だが正直細かい傷のほうが痛い。


腕や胴体に幾つもかすり傷や多少深めの傷がある。


「《カルラの光よ、我が肉体の翳りを祓いたまえ》」


すぐに淡い光とともに傷跡が消えていくが、なんとなく後味のようなものは残っている。


「…ふぅ、すごいな、ぎやま。あれを本番にくらったらヤバいわ」


「おれもまさかこんなんになるなんて思っ…!!宮崎君!?」


すると突然ぎやまは驚いたように大声を上げた。


ぎやまの後ろにはつねがいるだけだ。


一体どうし…


「…つね!?」


さっきから静かだとは思っていたが、なんとつねは全身を鎌で貫かれていた!


なんかもう満身創痍で[バイオハザード]に出てても違和感がなさそうな見た目だ。


消えてないということはまだ息があるということなんだろうが、あれでは死んだ方がましかもしれない。


考えてみれば、この鎖と多節棍の原点にはぎやまがいる。


密集している所の一番近くいたのだから、それ相応の被害を受けていて当たり前だ。


つねは意識があるようで、唯一貫かれていない左手で何かを訴えかけていた。


喉には鎌が突き刺さっているので声が出ないようだ。


「ごめんね宮崎君!今消すから!」

「……!!」


つねは懸命に止めようとしているようだが、ぎやまはそれに気づかずに舞霞を戻した。


途端につねの全身から噴水のように血が噴き出す。


「うわ!!」


「あ…ぎ、ぎや…ま…」


つねが地面に倒れながら声を絞り出す。


「…PCのハード…ディスク…壊し…とい…がっ…」


「つねー!」「宮崎く~ん!」


こうしてつねの命は尽き、霞となって消えた。


  ……bad end









 6月8日(金)17時11分


もちろんこれで終わりなんてことはない。


実際あっちで死んでもこっちで目覚めるだけなので、正直心配するだけ無駄だ。


さっきはあまりにもつねがショッキングな死に方をしたために動揺してしまったのだ。


今までは傷ついても傷跡から¨欠片¨が溢れ出るだけで、間違っても血液なんて出なかった。


「本当にごめんね、宮崎君」


「いやいや、いいって~。それにしてもいい技だったよww」


ぎやまは申し訳なさそうにつねに謝っているが、つねはあんまり気にしていないようだ。


全身を鎌で貫かれた痛みは現実と同じように体感したはずなのに、それを引きずっている様子はない。


「痛みとかないの?」


「慣れてるからね~」


本当に大丈夫なのか?


つねの左腕には大きい切り傷があるが、それができたときもケロッとしていたな。


他にもプールの授業のときに小さな傷がたくさんあるのも見たことがある。


『常春は痛みに鈍いところがあるからの』


「鈍いはやめてよ、トンちゃん」


つねは手元のトンちゃん(さん?)と談笑している。


『…厄介なことになったな』


「鬼丸?」


唐突に鬼丸が耳元で呟くのが聞こえた。


『思ってた以上に力をつけてやがるな。小僧を含めてみな半端じゃない¨欠片¨の総量だ』


「そうなの?」


『¨夢¨で血が具現化するなんて相当なもんだ。これじゃ遅かれ早かれ現実に影響が出てくるぞ』


6月8日(金)26′50″00


何かしらの法則性でもあるのか、今回のステージは俺がいつも修業している剣道場だ。


つねが死んでからまだ数分しか経ってないが、本人の「よゆーよゆー(笑)」の一言で再開した。


逆にリタイアしたのはぎやまだ。


目の前でつねを惨殺してしまったのが思いの外ショックだったらしい。


ぎやまは現実で待ってるとのことだ。


まぁ現実では待つほどの時間は経過しないが。


ということで今はつねと俺の1対1の対決をしている。


せっかく剣道場なのだから刀で闘おうとつねが言い出したので、俺は鬼丸、つねはダマスカスソードという独特な剣を遣っている。


6月8日(金)26′12″43


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