六拾
5月29日(火)0時??分
ザザッ…ザザッ…
「……ん」
俺は近くのスピーカーから洩れてきた雑音で意識を取り戻した。
「…あれ、ここどこだ?」
さっきまで城の中にいたはずなのだが、気がつくと城から少し離れた位置にある、お化け屋敷の前のベンチに座っていた。
何故か助けた少女から一撃をくらって、それからの記憶がない。
見たところ城を浸蝕していた¨闇¨は姿を消しているようだ。
【…ザザッ…、…現時点をもって三回戦終了だ。…残り人数108人。四回戦は二週間後、6月15日に執り行う。】
「え!?」
ちょ、ちょっと待って!まだ俺は誰も倒して…
『安心しろ。もうノルマは達成している』
「鬼丸…?」
どういうことだ?
『お前が気絶している内に殺っといた』
殺っといたって…
『それより放送だ』
【…おっといきなりごめんねー!まだ闘ってない人は、まぁシードだとでも思ってよ!とりあえず次の闘いまで時間あるし、出直してきてよ(笑)】
いったいどうなってんだ?
【それじゃお待ちかねのご褒美タ~イム♪】
俺の体に今まで以上の¨欠片¨が流れ込んできた。
しかしどうも釈然としない感覚は残る。
俺は城に向かって一歩踏み出した。
しかし二歩目は踏み出せなかった。
突如として全身を寒気が襲ってきたからだ。
「…なっ!?」
驚いて後ろを振り向くと、ちょうどお化け屋敷が内側から破壊されるところだった。
まるで爆弾が爆発したように屋根が吹っ飛ぶ。
余波がここまで伝わってきた。
そしてお化け屋敷の出口から姿を現したのは予想外の人物だった。
「ヤフー♪やっと出口だぜぃ( ̄∀ ̄)」
今にも踊り出しそうな様子で、なぜだか肩にぎやまを担いで、つねがスキップでお化け屋敷から出てきた。
「よっし!このまま他のアトラクションも制覇するぞ~ってそこにいるのは阿部ちゃんじゃん!」
呆然と立ち尽くしている俺の所までつねは小走りでやってきた。
「ぎやまに続いて阿部ちゃんにも会えるなんてついてるな!怖い思いをした甲斐があったってもんだぜ(≧∇≦)」
「えっと…。どういう状況だこれ」
「…う~ん」
そこでタイミングよくぎやまが目を覚ました。
聞いたところによると、つねの対戦場はあのお化け屋敷で、お化け(人工物)から逃げ回っていると目の前に天井を突き破ってぎやまが落下してきたらしい。
お化け屋敷の真上にはジェットコースターのレールが存在し、ぎやまはそこから落ちたそうだ。
「こんな偶然もあるんだな~(笑)」
「笑い事じゃないよ…。そういえば途中誰かにぶつかったような…」
「あ、それならぎやまと一緒に床に落ちて、下敷きになってキラキラー(笑)」
「え!?じゃあオレ闘わないで勝っちゃった!!」
「おれも何かお化け(人工物)片っ端から壊してたら間違えて倒しちゃったみたい(笑)」
なんかもう何でもありだな…
せっかく土日に厳しい修行をして、覚えたての技とか披露したかったのに…
そこでつねが上を見ているのに気づいた。
俺もつられて空を仰ぐと、なんと空にひび割れのようなものが広がっていた。
「ん~、まさに世界の終わりだね(笑)」
「なんだありゃ、これってやばくね?」
つねとぎやまはいまいち緊張感に欠けるリアクションだ。
『ここのステージを維持していた核が解かれたらしいな。今回は共有ステージだからこんな現象が見られるんだ』
「そうなんだ。でもこれ大丈夫なの?」
俺の疑問に鬼丸は即答した。
『このままじゃ歪みに巻き込まれて消滅する』
「「「は?」」」
三人のリアクションがシンクロした。
『まだしばらく時間はあるようだが、さっさと言霊を唱えたほうがいいな』
そう言われて俺達は異口同音に言霊を唱えた。
6月8日(金)16時45分




