五拾四
5月29日(火)0時??分
遊園地某所。お化け屋敷。
薄暗い和風な造りの屋敷の廊下。そこを宮崎は全力で駆けていた。
その両目は恐怖からか大きく見開かれ、全身に冷や汗を滲ませている。
何度も背後を振り返ってはバランスを崩しかけ、その度に走るフォームを修正していた。
突然廊下の途中にある障子がいきなり破れ、中から無数の腕が飛び出してきた。
「ぎゃああぁああああぁ!!!!?」
『落ち着くのだ常春!あれは作り物だ!』
「いやいやいやいやいやいや!!!?グロいグロいグロいグロいグロいってー!!」
『だから作り物だと…待て!それをここで使…』
ズガガン!!
「壊れろ壊れろ壊れろ壊れろお~!!!」
宮崎は斬馬刀を力任せに振り回し、やたらめったら廊下を破壊していく。
見せかけだけとはいえ、古い内装の屋敷は文字通り廃屋へと姿を変えていった。
遊園地某所。世界最高のジェットコースター。
ごおぉぉぉぉぉぉぉっ!!
「うおぉぉ!?無理無理高すぎるってここ!」
杉山はギネスにも登録されている某ジェットコースターよりも高い位置にあるレールの上にいた。
360度見渡してみても同じ高さの建造物はほとんどない。
眼下には豆粒以下の黒い点が動いているのが辛うじて見ることができた。
高度と遮る物がない問題により先ほどから、強風に煽られて足元が覚束ない様子だ。
杉山は必死にレールにしがみついている。
「なんでいきなりこんなとこにワープすんだよ!」
『落ち着いて裕ちゃん。ほら、すごい景色!ムス○じゃないけど人がゴミのように見えるわ!』
「そんな余裕ないって!てか景色見てる暇があるなら手伝って…ってうわあぁぁぁ…!!!」
『え?きゃあ!裕ちゃ~ん!!』
舞霞とのやり取りに気を取られたのか、迫ってくるジェットコースターに気づかず杉山はまともに正面から衝突した。
そして霞むような高さから地面に向かって紐なしバンジーを開始したのだった。
遊園地某所。ベンチ。
「誰もいねー…」
体感時間でだいたい40分ほど経っただろうか。
際限なく続く遊園地の敷地内を、対戦者を探して阿部は走り回っていた。
最初は何人かの生徒と接触できたが、今ではほとんど人影も見えない。
そもそも遊園地の全貌すら見えてこないため、阿部は精神的に疲労していた。
行けども行けども端にたどり着かない。それも当然である。
先ほど舞霞が見ていた景色を見る者が見れば見破っただろう。
この遊園地全体が超巨大なドーム状の空間の中にあることに。
そしてドームの壁に接した部位から先にはドーム内の別の空間が映し出されていることに。
このドームの中はさながら無限回廊のごとく複雑にループしていた。
不意に
阿部が座っているベンチの上空に黒い影が現れた。
その影はどんどん阿部に向かって落ちていく。
そして
ベンチに座って休んでいた阿部に激突した。
5月29日(火)0時??分




