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四拾七

ここで宮崎君の豆知識を語っておこう!


まずナックルダスターとスポーツ用のグローブの違いは、攻撃力を増すかどうかにある。


ボクサーのバンデージは拳を固めて攻撃力を上げるため前者であるが、グローブは相手に与えるダメージを軽減するため後者である。


ボクサーが素手で一般人を全力で殴ってしまえば、普通に骨は砕けるし内臓は破裂する。


ボクサーはその拳で人を殺せるのだ。


そして素人でも拳に仕掛け(例に挙げたバンデージなど)をすることで、十分な破壊力を発揮することができるようになる。


何を言いたいのかと言うと…


普通に強い奴に更にそれらのものをプラスした場合、まじで勘弁な状況になる、ってことですたい!


5月22日(火)0時21分


「こんなとこにいやがったのか。正面から堂々とはこれないのか?」


階段の上からそう言ってくる男子生徒。さっきは余裕がなくて観察できなかったが…


「ねえ、もしかして君ラグビー部?」


「…っ!いきなりなんだよ」


仮面(見た目に似合わず猫の仮面だった)の隙間から見える目が見開かれるのが分かった。


どうやら図星のようだ。


何故相手がラグビー部だと分かったのかと言うと…


ズバリ体だ!


…いや、変な意味じゃなく(汗)


陸上部の室内トレーニングでは第三体育館の前にあるウエイトルームで筋トレするんだけど、


ウエイトルームではよくラグビー部と一緒になる。


おれが知ってるラグビー部員は数名だが、なんとなくこの体型には見覚えがあった。


「いやあ、さっきの一撃は効いたよ!死ぬかと思った(笑)さすがはラグビー部員、だてに鍛えてないね。実際に生で見て、触って、確かめてみたいもんだけど…」


そこまで言って、おれは階段を一気に駆け上る。


「…今は感触が鈍いから次の機会にするよ!」


言い切るのと同時に跳躍し、俺はだいたい180cmほどの巨大な体にトンファーをめり込ませた。


5月22日(火)0時22分


おれは瞬時にトンファーの打撃を数発顔面と腹に叩き込むと、ラグビー部員が怯んだ隙に外に(通路に)飛び出す。


狭い場所で闘ってもいいけど、その巨体を活かして追い詰められた場合力業では勝ち目はあまりない。


それに…


「ふざけんなよ、変な仮面しやがって!!」


ドゴンッ!


わざわざ出入り口の壁に小さなクレーター状の跡を残し、目の前で掲げるラグビー部員の拳にはナックルダスターが装着されていた。


まあ、いわゆるメリケンだ。俺も昔何種類か使用してたから分かるが、あれは多分ブラスナックルだ。


拳への衝撃を拡散してくれるのが使い勝手のいいところで、おそらく【神器】の特徴は最大限に引き上げられているだろう。


いくらなんでも腕力だけで壁を抉ったり削り取ったりなんてできっこない。


おれだってただのトンファーじゃ壁を破壊するなんて芸当できはしない。


いや、いけるか?


「変な仮面だなんてひどいなww結構気に入ってんのにさ。とりあえずそんなかっかとしなさんな」


「ふざけてんのか!!今すぐ叩き潰してやんよ!」


そう怒鳴って迫り来るラグビー部員。おれは仮面おかめを掻きながら呟いた。


「熱くなってんな~。とりあえず久々にストリートファイトでもしてみますか。…出てこい、《ナックルダスター セスタス》!」


おれは予選で手に入れた【神器】を手に装着する。


こいつはあのラグビー部員と同じくナックルダスターの一種で、ローマ帝国の拳闘士が使っていたと言われる革製の武具だ。


何度か手を閉じたり開いたりして馴染ませると、迫ってくる拳に合わせておれの拳を突き出した。


「ぐあっ!?」


ラグビー部員の顔面にクロスカウンター気味の一撃が突き刺さる。


「甘いよ、君。そんな人を殴り慣れてないような腑抜けた拳じゃ、おれには勝てない」


久々のストリートファイト(もどき)にテンションが上がってきた。


今のおれは、高校に入ってから押さえ込んでいたものを思う存分発散できることを理解し、そして笑った。


「ふ、ふふ、ふふふははははははははははは!」


昔のおれには遠く及ばないが、胸の奥底から沸き上がってくる衝動が感じられる。


「あああぁ--------!!!」


心の底から思い切り声を張り上げ、おれは再び拳を振るった。


5月22日(火)0時29分


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