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四拾

【鎖鎌:全長50~60cm(鎖は250~400cm)。重量2~3kg。日本(16~19世紀)。草刈り鎌に鎖分銅を取りつけた、農具を発展させた武器。後には日本刀並みの刃を持ち、柄も強化された戦闘用のものも作られた。しかし、使いこなしが難しいため普及せず、使用者は一部の武芸者のみに限られた。】


5月22日(火)0時15分


開始から約15分。オレは新体操場の天井に張り付いていた。


もちろんオレはスパイダーマンじゃないので、舞霞を使ってである。


対戦者を待ち伏せしているほうが先手を打てるし、仮に対戦者のほうも同じく待ち伏せしていたら、まぁ焦ったほうが負けるよね。


どうしてここを選んだかって?それは新体操場は広いし、たくさんの器具があるからだ。


舞霞の鎖を利用して闘うオレのスタイルには、まさにこんな場所のほうが向いてる!気がするし。




オレはこの数日で舞霞の鎖を自在に操れるようになっていた。


今じゃ舞霞を自分の手足のように感じている。


「…これで女じゃなければなぁ」


そう、阿部君や宮崎君の【神器】の人格は男性なのに対して、オレの舞霞は女性の人格なのだ。


いや、別に女だからどうとかじゃないけど、できれば男であって欲しかった。


『ん、どうかした?』


「…いや、何でもない」


自分の声で艶めかしい口調とか精神的にくるからやめてほしい。


ちなみにどうやって天井に上がったかを簡単に説明すると、まず舞霞の鎖を伸ばす。


次に棍を分裂させて大きさを調整、そして遠心力を利用して棍を高い位置にある支点部位に巻き付けて固定する。


それを様々な位置に複数設置することで網目の荒いクモの巣のようになる。


後は鎖の長さを調節してオレ自身を引き上げて今の状態にまで持ってくるだけだ!


…まぁ誰に向かって言ってるんだよ、って感じだな。早くこないかなぁ。


もしかしたら最後まで我慢比べを続けた挙げ句、じゃんけんで勝敗を決めることになるかもしれない。


待つのも何か飽きてきたし、やっぱり捜しにいこうかな…


カラカラカラ…


「…!」


するといきなり出入り口の扉が少しだけスライドし、その隙間から誰かの仮面が覗き込んできた。


電気は鎖が目立たないように消してあるけど、それが災いしてどんな仮面をつけているのかはわからない。


とりあえず…


「(そのまま中央まで来い…!)」


ちょうどオレが陣取っているのが入り口付近の…輪っかのついた鎖が固定してある器機の真上辺りだ。


真下まできてくれれば落下の威力を利用して一気にかたをつけることができる。


「…《棍》」


オレは前回手に入れた棍を構えると、都合よく真下近くまで来てくれた相手に向かって一気に落下した。


「うおっ!」「…!?」


バスンッ!


しかし予想もしなかったことに、不意をついたはずのオレの一撃は紙一重でかわされてしまった。


唖然とするオレをよそに、相手は草刈り用の鎌のようなものを構えて突っ込んできた。


「…!」


後方に向かって全力で跳ぶ。


一瞬の差でオレの首があったあたりを鎌が一閃する。後一秒でも呆然としていたらそのままやられていた…


相手は深追いしてくることなく一定の距離を保ったままじわじわと近付いてくる。


「ねえ、どうしてオレが攻撃してくることが分かったの?」


思い切って疑問を投げかけてみると、相手は仮面(クマをモチーフにした仮面だった)を掻きながら答えてくれた。


「…あんたさ、結構抜けてない?他の体育館とかの電気はついてるのに、ここだけ消えてるのなんておかしいでしょ。最初は罠かとも思ったけど、注意してれば不意打ちにはなんないよ」


「…Oh、shit!」


何てこった。これは本当に俺のミスだ。もう少し頭を使えばよかった。


「さてと、じゃあいくよ…!」


そう言って戦闘体勢に入るクマ仮面に、オレは改めて気合いを入れ直した。


5月22日(火)0時01分

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