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三拾九

5月22日(火)0時03分


「ここは…2Lの教室か。」


今は深夜だが、教室の中は蛍光灯のおかげで眩しいくらいだ。


ふとこんな時間に電気をつけていたら近所迷惑じゃないかとも思ったが、ここは夢だし心配ないか。


それにしても誰もいない(敵を除く)深夜の学校という言葉の響きは薄ら寒いが、不思議と恐怖心は沸き上がってはこない。


俺の他には俺を殺しに来る敵しかいないと思うと若干背筋が寒くなってくる気はするが…


『…いつまでもぼおっと突っ立ってないで、さっさと対戦者を探しに行ったらどうなんだ?闘うにしても互いによく知ったフィールドなんだ、隠れるなり罠を仕掛けるなりできるだろう』


突然鬼丸にそう言われて、俺は不覚にもビクついてしまった。


最近あまり召喚していなかったため、誰もいないのに声がするという状況に驚いた。


「…!ああ、そうだね。とりあえず教室を見て回ろうかな。相手がどこにいるか知らないと罠も張れないし」


そう言って俺は教室を後にする。


それにしても、普段は気にならなかったが、出入り口でスライドさせたときの音があんなに大きかったなんて知らなかったな…


これは心して行かないと逆に見つかってしまう。


5月22日(火)0時18分


「…いないな」


まずは2ハウス全体を慎重に調べてみたが、そこにはいないようだった。


次に隣接している3ハウスも調べてみたがハズレ。


今は4ハウスの職員室を探しているが、他の教室やハウス会室同様に相手は見あたらない。


一応説明しておくと、ハウス会とは、生徒会とは別に稲穂学園の各ハウスの支配、いや、行事を仕切ったりまとめたりする組織…だったかな?


あまり接点がないのでよく知らないが、ハウスごとに存在している。


それはそうと…


「本当、無駄に広いよな…稲穂って」


ハウス一つ一つに普通の学校の全生徒が入るだけの容量があるため、ざっと見て回るだけで一苦労だ。


ハウスごとにA~Lまでの12組の教室があり、他に職員室とハウス会室とトイレ。


まだ5ハウスと6ハウスが終わってないし、職員棟と芸術棟、他にも中等部(1ハウス)、体育館なんて大体育館も合わせれば4つもある。


それに階段の位置が違うからまだそれぞれのハウスの三階には行っていない。


剣道場や生徒会本部、図書室も残ってるしきりがない!


「…やっぱり待ち伏せでもしてようかな。稲穂学園でかくれんぼとかしたら絶対一時間じゃ終わらないよ…」


そんなマイナスな考えに捕らわれていると、ほんの違和感のような音が聞こえた気がした。


「…!」


俺は慌てて耳を澄ませてみたが、辺りは静寂に満たされていて何も聞こえてこない。


「…鬼丸」


『…ああ。今のは空耳じゃあない。お前と違って辺りに気を配ってたからな。…だがはっきり位置までは分からねえ。ここ(稲穂学園)の通路は広くて音が反響しちまうからな…』


俺はとりあえず職員室を出て、4ハウスの入り口まで移動する。


4ハウスの前は2ハウスからの道と5、6ハウスへの道、そして体育棟への道が交差している。


今度は目を閉じて音に集中すると、微かにだが体育棟の方から足音が聞こえてきた。


ゆっくりと足音は遠ざかっていくので、先ほど聞こえてきた音は4ハウスの前を通ったときのものらしい。


俺は足音を立てないよう注意しつつ、体育棟の方に移動を開始した。


5月22日(火)0時15分


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