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三拾八

5月18日(金)8時18分


朝の教室は半分ほど席が埋まり、そこそこの喧騒で普通に話していても問題はなさそうだった。


「昨日は激戦だったよ。体育会系の相手でさ。三日間で二刀流の修行してなかったらもっと苦戦してただろうな…」


「こっちも¨欠片¨で鎖を伸ばしたり棍を分解して増やすイメージを実践しといてよかったよ。でも消費が結構でかいのはまずいなぁ…」


「俺なんか虐めだよ(泣)三人対戦な上に結託して俺を潰しにきたしww」


俺達は一回戦での出来事を報告し合っていた。二人も俺同様に苦戦してきたらしい。


この三日間で俺達は個々の特性を生かした闘いができるよう、別々に修行してきた。


結果俺は小刀 朧雪を召喚し二刀流での戦闘が可能になった。まだ修得できた技は二、三個だ。


鬼丸が言うには


『記憶や経験が脳にあるからといって体が素直に反応するわけじゃあねえ。それは夢だろうが現実だろうが変わらない。お前も剣道をやっていたみたいだが、今やれと言われても昔とまったく同じにはできないだろ』


とのこと。納得の理由だ。


「まぁ二回戦は明後日の夜だし、今はとりあえずテストに集中しよっか」


そうなのだ。ぎやまが言うように、来週の水曜日から中間テストが始まる。


もう三年だし、夢のことばかりに時間は割いていられないな。


するとつねが両手で顔を覆い膝をつくと打ち拉がれたような声で


「ふ、ふふ…。テスト、テストね。忘れていたよ…。まったくもって範囲すら覚えてないし授業最近寝てばかりだったから今回はいつも以上にやばい…」


一年のときからテストを赤点もしくは赤点ギリギリでやり過ごしてきたつねは恐らく今回も勉強などしてきていないだろう。


まぁ自業自得だな。とりあえず俺はリーディングの範囲でぎやまと話し合うかな。


今は夢のことは忘れて切り替えていくとしよう。


5月21日(月)11時30分


「リーディングはこんなもんかな」


俺はテスト1日目にあるリーディングの復習を終え、教科書をカバンに入れるとベットに横になった。


すでに頭の中では今終えたばかりのリーディングの内容は頭の隅の方に追いやられている。


この数日はテスト勉強に集中するためにわざと考えないようにしてきたが、今から30分後には二回戦が始まる。


一回戦はどうにか勝つことができたが、未だに本当に闘っているのか実感が沸かない。


もしかすると、痛みや感覚が鈍いため脳がリアルな夢を見ているとしか認識していないのかもしれない。


「ま、実際夢だけどな…」


誰に聞かせるでもなくそう呟いて二回戦について意識を集中させる。


(そういえば、前回残ったのって410人だっけ?)


一回戦の制限時間がくるとスピーカーからいつもの声が発せられ、予選とほぼ同じ内容が放送された。


その時聞いた残りの参加者数がたしか410人。何人かリタイアしてきりのいい人数になったらしい。


中にはつねのように1対1ではなかったところもいくつかあったのだろう。残りは半数以下の人数だ。


2日ぶりに鬼丸を召喚してみると、眠っていたところだったらしくとても不機嫌な様子だった。


5月22日(火)0時00分


【…ザザッ…、ヤッホー、みんな!久しぶり!そう日にちは経ってないけど待ち遠しかったよ!それでは二回戦のルールを説明するよ!今回は教室に限らず校舎内ならどこでもOK!もちろん前回同様に飛び道具主体のみんなは外ね!とりあえずフィールドには君と対戦者の二人しかいないから存分に闘ってよ!ん?どういうことかって?そんなん気にすんな!】


おいおい、結構気になるとこだぞそれ。それにしても飛び道具、弓矢とかか、は外で闘ってたのか。


確かに室内じゃ狭過ぎて扱えないだろうな。


【…フィールドについて説明しよう。…ここは夢であり、独立した世界でもある。…同じ空間に幾つもの空間を並列に存在させることも可能だ。…イメージしやすいように説明するならパラレルワールドのようなものだと思え。】


ええっと…、つまりどういうことだ?何かよく分からなくなってきたな…


【…理解できなくてもかまわない。…その世界は¨欠片¨から成り立っている。】


…まったく分からん。多分鬼丸に聞いても答えは返ってこない気がする。


【あぁもお、カリヤはいっつも説明が分かりにくいんだよ!どうせそんなことみんな気にしてないから!余計な説明で時間の無駄になってるよ!…それじゃあみんな!今回はフィールドも広いし、制限時間は一時まで!経過時刻は適当に教室ので確認して!それじゃスタート!!】


【時間の無駄…】


カリヤのそんな呟きと共に二回戦の幕は開かれた。


5月22日(火)0時03分


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