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三拾二

5月14日(月)8時15分


「うおおおぉ!ジミー、悪かった!つい出来心だったんだ!!」


「何だよいきなり。予習忙しいんだから後にしてよ。」


「出来心だったんだ~!!」


「止めろよめんどくさい。」


俺が教室に入るとつねがジミーの天パの髪をわしわしと撫で回していた。ジミーはそれを鬱陶しげに払っている。


昨晩あったことを思えばジミーはつねに激怒してもおかしくないけど、あくまでジミーは普段通りにつねの相手をしている。


「やっぱり記憶が消えるって本当だったみたいだね。さっき確認してみたけど、ジミーはまったく覚えてなかったよ。まぁ宮崎君だって気づいてなかったかもだけど、夢に関することは全部忘れてた。」


「ぎやま。」


振り向くとぎやまがちょうど教室に入ってくるところだった。


5月14日(月)0時30分


キ~ンコ~ンカ~ンコーン


俺が小太刀を手に入れた直後、学校の敷地内にチャイムの音が鳴り響いた。


そしてすぐにスピーカーから音が漏れ出す。


「お、ちょうど終わったみたいだ。結構ギリギリだったね、阿部ちゃん。」


つねにそう言われて俺は頷いた。確かにギリギリだった。つねとぎやまがいなかったら時間切れだったかもな…。


【…ザザッ…、あ~、テステス。ハ~イ、終了!時間だ!これにて予選終了!…え、予選だなんて聞いてない?そんなん気にすんな!それでは結果発表!予選で脱落した人数は…え~と…大体1000人くらいかな?まぁ残った人数言えば分かるか!えっと、…現時点で残ってるのは、なんと1116人!結構残ったね~。でも最初は2400人もいたんだから半分以下か!誰も倒せなかった奴もやられた奴同様リタイア扱いだからもっと減るかな?それでもこれはすごい数だね!中には一人で何人も倒したやる気な子もいるみたいだし、今後が楽しみだ!…ん?カリヤも何か話す?…OKOK、んじゃ交代!】


スピーカー越しにマシンガントークを続けていた声に替わり、今度はあの淡々とした口調の男になった。


【…とりあえず、勝ち残った者に関しては、よくやった。…条件を満たせなかった者には退場願おう。】


そうカリヤと呼ばれた男が言った途端、伊奈学園の各地から光の柱が上がった。


「な、何だ!?」


『強制的にこことの繋がりを遮断しているようだ。お前も後少し遅ければあの光に飲み込まれてただろうよ。』


【…残りは923人だ。たいしたものだな。…予選を勝ち残った者には褒美をやろう。…まずはこれだ。】


「ぅあ?」


途端に体の中に何かが流れ込んできたのが分かった。痛みはないが、何か奇妙な感覚だ。


「うお、何だこりゃ!」

「…キャハ♪」


ぎやまとつねも同じように何か感じたようだ。てかつねが狂ったように笑ってる…正直引きそうだ。


【…お前たちの願いを少々叶えさせてもらった。…と言っても本当に望んだ願いではなく、日常的に存在する願望のほんの一端だけだが。…これから勝ち続けていけば、そういった願いはどんどん叶っていく。…もちろん一番強い願いだけは最後まで勝ち残らなければ叶わないが。】


「鬼丸、あいつは何を言ってるんだ?」


『後で説明してやる。』


そこでまた最初の男に替わったようだ。


【さて、それじゃあ本戦第一回戦についての説明だ!内容は1対1のガチンコバトル!!燃える闘いだね!え、予選と同じ?いやいや、本戦からは決まった相手を倒さなくちゃいけないし、それに倒すのはたったの一人だけでいいんだ!まぁ細かい説明は直前にするから今日のところはお疲れ様!別にめんどくさいわけじゃないぞ!】


【…本戦開始は3日後だ。…それまでに本格的に始まる闘いの覚悟でもするんだな。…分かってはいると思うが、質問は自分たちの【神器】にしろ。…あえて言っておくが、仲間を集め団結することは禁止しない。…しかし、いつかそいつと闘うことになる可能性は0ではない、ということだけは心に刻んでおけ。…これにて予選を終了する。】


そうして俺は夢から覚めた。


5月14日(月)8時15分


「昨日はいろいろありすぎて頭痛いよ…。それにしても阿部ちゃん、夢…」


「ぎやま、とりあえずそれは後で。学校には他の参加者ばっかりだし。」


「あ、そっか。じゃあ放課後宮崎君と3人で話し合おうよ。」


「OK、それまでに話まとめとくよ。」


5月14日(月)4時35分

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