二拾
5月12日(土)1時30分
「数百年以上前って…。いきなりスケールがでかくなったな。」
ぎやまは難しい表情をしながらそう言った。俺もつねの言葉に少しばかり考えさせられる。
今俺たちが直面しているこの夢はなんだ?
数百年以上前から続いているのに何故話が広がってない?
俺の疑問にはつねが答えてくれた。
「ここからが面白いとこなんだけどさ。なんでもこの戦いで負けたりリタイアしたら、夢で見たり経験した記憶は全部忘れちゃうらしいんだ。」
「だから聞いたことがなかったのか。」
そんなみんなが同じ夢を見たり夢の中で戦ったりしてれば噂にだってなるはずだしな。
俺は納得すると他の質問をしようとした。しかしつねはそれを手で制した。
「まぁ細かいことは自分で聞くといい。ぶっちゃけ説明めんどいし。さぁ阿部ちゃん寝よう!」
「宮崎君が言うと何か別の意味に聞こえるな…」
ぎやまがそう呟いているが確かにそう思う。日頃の行いが原因だな。
でもつねの言葉も一理あるし、どうしたものか。
「そういえば夢の中って時間の感覚が違うみたいだよ。さっきまでだって俺が寝て起きるまでだいたい15分くらいだったけど、実際夢では3時間前後は粘ったはずだし。」
「そうなんだ。確かに夢って結構見てるようで意外と短いよね。怖い夢とか本当に長く感じるし。」
ぎやまはそう返しているが、それが本当なら今から5分程度寝て1時間くらいは夢を見れるはずだ。
「じゃあちょっと寝てみるかな。」
俺はそう言うとベットに横になった。だが寝ようとしてもすぐには眠れない。
しばらく待って仕方なく目を開けると目の前につねの顔があった。
「うわあああぁあああ!!!!?」
俺が全力で顔面を殴ると、つねは後ろに跳んで威力を軽減しつつ受け身を取って立ち上がった。
「ふっ…、やるじゃないか阿部ちゃん。」
「何やってんだよつね!てかぎやまはどこに…」
部屋を見渡すとぎやまの姿がない。それにつねがにこやかに応えた。
「ぎやまならトイレだ!俺はそのチャンスを逃さず…」
「……。」
俺は無言で英和辞典を振りかぶった。ようやくつねが静かになる。結構いいとこに入ったが、つねなら平気だろう。
改めてベットに横になってみたが目が冴えてしまって眠れない。
仕方なく寝るのは諦めて、戻ってきたぎやまと復活したつねの3人で話し合った。
5月12日(土)5時18分
「もうこんな時間か。結局宮崎君の夢くらいしか収穫なかったね。」
「まぁ夜になれば分かるさ、ぎやま。とりあえず俺たちも今夜いろいろ聞いてみよう。」
「阿部ちゃんの夢の中…ムフフ。」
一部手遅れなやつがいたが、今日はこれで解散となった。
後は今晩夢を見るだけだ。
5時13日(日)0時15分




