拾九
5月12日(土)1時21分
「知りたいなら夢を見るといい!」
突然響きわたった声に俺とぎやまは仰天した。
「うおっ!何だ!?」
ぎやまは軽く身を起こしながらキョロキョロしている。
「つね!いつの間に忍び込んだ!!てかベットに潜り込むなよ!」
俺は不自然に膨らんだ毛布を剥ぐとつねを引きずり落とした。
「ぐふっ!ちょ、阿部ちゃんタンマタンマ!いきなりは痛い!」
「いつ入ったの?さっきまで入り口にはぎやまがいたはずだけど。」
俺は床に転がっているつねに質問してみた。するとつねはいい笑顔で親指を立てた。
「阿部ちゃんが家を出たのを見計らってママさんに入れてもらった!いつまで待っても上がってこないからメールして、驚かそうと思ってベットに潜り込んでるうちに寝てたぜ!」
とりあえず一回踏んでおいた。
5月12日(土)1時23分
「それで宮崎君。夢を見ればいいってどういう意味?」
床でのびているつねにぎやまが質問をしている。確かに先ほどの言葉は気になっていた。
「へっへっへ!ただじゃあ教えられないなぁ!教えて欲しければ阿部ちゃんの妹の下着を…ぐはぁ!?」
調子にのっているつねの頭に教科書の束を落とすと第二陣を構えた。
「ストップストップ!冗談だから止めてくれ!!」
俺は教科書を机に置くとつねを見下ろした。
「それで夢を見ればいいって何?」
冷たい目線を向けながら聞くとつねは冷や汗を垂らしながら答えた。
「ほら、さっきまで俺寝てたじゃん?その時また夢を見たんだよ。」
つねの話を簡単にまとめるとこうだ。
驚かそうとベットに潜んでいたつねは部活の疲れからか寝入ってしまった。
すると妙にはっきりとした夢の中で昨晩同様に目の前に自分が現れた。
それを夢だと自覚したつねはいくつか質問をしてみたらしい。
その結果分かったのは、昨晩の夢はいわゆるエントリーするかどうかを確かめるためのものだったということだ。
聞いた限りでは、戦いが始まるまでの三日間は毎晩夢の中で説明をしたり体に馴染ませたりする準備期間だったようだ。
一日目の夢で対象人物の記憶と同化して戦いにおけるパートナーともいえる分身を作り出し、参加の意志の確認をする。
参加する場合は対象が睡眠から覚め、次に眠るまでの間に対象と同調するなどの調整をする。
参加しない場合は夢に関する記憶を消して、主催者の下に帰る(らしい)。
そして二日目には戦いのルールや様子を説明してくれるはずだったそうだ。
だが夜を待たずに寝てしまったつねは、夢の中で微調整をしていたもう一人の自分を見つけてしまった。
だから夜を待たずに説明を受けることができたそうだ。
「意外とあるらしいよ、そういうこと。授業中に居眠りして夢に入ってきたりとか。あくまで夢と繋がっているだけで、すぐ目が覚めるらしいけど。」
つねのその言葉に俺は違和感を感じた。
「待って、つね。てことはこういったことって前からあったの?夢の中で戦ったりとか…。」
「そうみたいだね。なんでも数百年以上前から続いてるらしいよ。」
俺とぎやまはその言葉に声を失った。
5月12日(土)1時30分




