百九拾一
7月9日(月)11時56分
俺は仮病で学校をサボり、ちいが通う学校に来ていた。
正午まで5分もない。
すでに俺は学校の周りにいた3人の生徒を気絶させている。
思ったより少ないが、一般人を襲うなら戦力的にこれで事足りるのだろう。
なにせ俺たちの身体能力は¨夢¨ほどでないにせよ、軽くプロのボクサーやメダリストくらいの実力はあるのだから。
「……。」
俺は携帯を取り出し、メモに書かれた番号を間違いないよう押した。
数秒のコール音。
『もしもし?』
忘れようのない声がした。
「……。」
何も言わないでいると、それだけで予想はついたらしい。
『もしかして阿部君かな?こうして電話をくれたってことは仲間に「黙れ」…』
俺は断罪の言葉を遮って言った。
「戦線布告だ。お前らはぜってー潰す。俺のだちを傷つけたり、あいつらに危害を加えようとしたことを後悔させてやる」
一気にまくし立てるようにそう言うと、断罪は余裕のある様子で言ってきた。
『…ふ~ん。そんなこと言っていいのかな?今彼女さんの近くには』
「そいつらはもうのびてるよ」
『……。』
「この程度で俺の身内をどうにかしようなんてなめんなよ」
妹は一応轢き逃げされかけたということで今日1日は保護してもらっている(俺が強めに頼み込んだ。前の事情聴取の時の担当者を通してもらった)
『…この程度、ね。聞いていいかな?』
「?」
『そこに、何人いる?』
なんでそんなことを?
疑問に思ったがありのままを言ってやった。
「…3人」
『…あは、あはははは』
すると断罪はさもおかしそうに笑い出した。
「何がおかしいんだよ!」
意味が分からず強めにに言うと、電話越しに笑いすぎで乱れた呼吸音が聞こえてきた。
『ハァ…ハァ。まあ待ちなよ。…そろそろ時間になるから、さ』
「?」
何を言って…
ピンポンパンポーン
すると突然学校のスピーカーからチャイムと同時に音が漏れ始めた。
【全生徒は至急各担当の教員の指示に従って、速やかに校庭に集合して下さい。繰り返します。全生徒は至急各担当の教員の指示に従って、速やかに校庭に集合して下さい】
放送が終わると同時に校舎からはかすかなざわめきが聞こえてきた。
「何したんだよ!」
携帯に向かって怒鳴ると、断罪は愉快そうに笑ってから答えた。
『なに、ちょっと「爆弾を仕掛けた。0時過ぎに爆発する」って学校側に電話しただけだよ』
「なっ…!」
『一斉に出てくる生徒達の中から、彼女さんを見つけることはできるかな?もしかしたら…』
そこで断罪は一度言葉を切った。
『…下校中の生徒に自動車が突っ込んで大惨事!みたいなことにならないといいよね』
「てめえ!!」
『ああ、そうそう。僕が送り込んだ人数だけど、そこの3人を合わせて10人だから。それじゃ(ブツッ)…ツー、ツー…』
俺は急いでちいに電話をかけたが、マナーモードにでもしてるのか繋がる気配がない。
玄関からは次々と生徒が溢れ出してくる。
俺は全力で走り出した。
7月9日(月)12時02分
ブロロッ…!
走り去った阿部と入れ違うように、重低音を響かせながら二人乗りのバイクが停まった。
後ろに座っていた青年が運転手の男に礼を言うと、黒いライダースーツの男は早く行けとばかりに手を払う。
走り去って行ったバイクを見送ると、青年は帰宅する生徒の波に目を向けた。
「さ~てとぉ(‐ω‐)
一丁やりますか(・д・)」