百八拾八
7月6日(金)17時25分
日が暮れて辺りが少し薄暗くなってきた。
最近蝉の鳴き声がますます騒がしくなってきた気がする。
汗ばんだシャツが不快だ。
(そういえば明日は七夕なんだよな)
何を願おう。
年をとるにつれて叶って欲しい願いは俗物的になってきた。
とはいえ、よく考えてみると今の俺は七夕に彦星や織姫、こと座のベガやわし座のアルタイル…だったか?に願わなくたって簡単に夢や希望が叶う立ち位置にいる。
ゲームで優勝しなくてもクリアしていくだけで願いは叶っていく。
…戯れ言だが、夢のない話だ。
それはさて置き、俺は近くに不審な人物がいないか改めて確認する。
妹を陰から見守り始めてから今のところ全くの平穏。
断罪のだの字もない。
あいつの適当な言葉に踊らされてるんじゃないかと思う。
それでも一応俺は妹に危険がないか気になって張り込んでいる。
…♪♪…♪♪…
ポケットに入れておいた携帯から軽快な着信音が流れだした。
曲名は[◯だけを守りたい]
1997年、「ウルト◯マンダイナ」エンディングテーマソングとしてTHE AL◯EEの高見◯が作曲、中島文◯が唄った曲だ。
ウルトラマンダイナの世界においては流行の歌という設定になっていて、SUPER GU◯Sの隊員や一般人の女の子も歌っている描写がある(26話)
映画ウルトラマン◯ーガでは、テレビシリーズの世界観を継いだアスカがフューチャーワールドと呼ばれる映画独自の世界へとこの歌を広め、その世界の少女のリーサがアスカを思い弾き語りをするシーンがあった。
またアスカを演じたつるの◯士もこの歌が好きで、自身のカバーアルバムに収録されていたりウルトラマンサ◯ガの中で挿入歌として歌っている(ただし後者はアスカとして)。
作曲者のTHE ALFE◯もセルフカバーアルバムにこの曲を収録していて、つい最近もTaka◯y名義でカバーして…っと、とりあえずでるか。
相手は霧島舞霞だった。
「もしもし、霧島さん?」
『あ、阿部君?今大丈夫かな』
「大丈夫だよ。何かあった?」
『ううん、彼女さんが無事帰宅したからその報告。怪しい気配みたいのはなかったよ』
「そっか、ありがとう。ごめん、わざわざ」
『いいっていいって!裕ちゃんの友達は私の友達だし、裕ちゃんの友達の彼女さんは私の彼女みたいなものだから!』
「いやいや、さすがにそれはだめだって」
その後一言二言連絡を終えてから通話を終える。
比較的ちーの通う学校の近くに引っ越したので、舞霞には時間が空いたときに見守ってもらっている。
そして舞霞本人は知らないだろうが、それを知ったぎやまがちーを見守る舞霞を見守っている。
ぎやまは妙なところで素直じゃないな。
まあ舞霞のことだから気づいていてわざと何も言わないのかもしれないが。
携帯をしまおうとすると、ちょうどメールがきた。
From:宮崎 常春
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[M組についてだけど、3ハウスに今年設立されたみたいだよ(‐ω‐)
名前とかはプライバシー保護のためとかなんとかでまだ分からぬ。
どうも一年の時から不登校だったっぽい(・д・)]
まだリハビリを終えていないつねは情報網を駆使して断罪について調べてくれている。
とはいえあまり重要そうな情報はまだ分からないようだ。
ちーや妹のことがはったりだとしても、敵であることに変わりはない。
次の闘いまで一週間。
とりあえずそれまでは厳重に注意しておくにこしたことはない。