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百八拾三

6月26日(火)?時??分


三日月は興味深げにとある生徒に目を留め、じーっと眺めている。


「天下五剣…三日月…そうか、会うのはこれが初めてだね」


そいつは油断なく【神器】を構えていたが、何を思ったのか左手に持った村正を仕舞い、制服の胸ポケットから手鏡を取り出した。


「こんな日差しのある内から出てきて大丈夫なの?聞いた話だと、月の加護を得る代わりに日光に当たると体が耐えられないらしいけど」


!そうだったのか。そういえば夜以外に三日月の姿を見たことないかも。


三日月は無言のまま反応しない。


「まだ時間的に太陽が顔を出してるからもう手遅れかもしれないけど…ねっ!」


そう言ってそいつは鏡をこちらに、正確には三日月に向けた。


「!」


瞬間三日月の姿が数メートル横に移動し、ちょうど三日月の後ろにいた生徒がかき消えた。


「…あは!よく避けたね。もしかしてこの¨鏡¨の能力をあらかじめ知ってた?」


三日月は消えた生徒にも動じず、いつも通りの淡々とした口調で言った。


「知ってるも何も、その鏡を配置して回ったのは、私」


その言葉にそいつはつまらなそうな顔をした。


「なんだ、じゃあ意味ないか」


そう言ってバックステップで距離をとる。


「まったく…予定通りに行かなかったけど、とりあえず欲張らないようにしとくかな。君のことは彼ほど詳しく知らないし」


「…彼?」


「いや、こっちの話さ。…阿部君」


そいつの視線は三日月から俺に移った。


「とりあえず君のことは諦めないよ。必ず仲間に引き入れてみせる」


「お断りだ」


相手の思考力を奪って無理やり操り人形にした挙げ句、それを友達だなんて言うやつの仲間になんか絶対になるつもりはない。


「できれば自分の意思で来てくれると嬉しいな。…可愛い妹さんや彼女さんのためにも、ね」


「!?」


今なんて言った?


「僕って気まぐれだからさ、いつまでも待たされたり、思い通りにならなかったらつい手が滑っちゃうかもね」


そいつの言葉に頭の中で血管がブチ切れたような気がした。


「お前…!指一本触れたら只じゃおかねえ!!」


そいつは俺の殺気を軽く受け流し、手を上げて合図を送る。


途端に俺を押さえつけていた生徒達は一斉にそいつの周りに集まり、無言で整列した。


「ま、せいぜい帰り道には気をつけるようよく言って聞かせておくんだね」


そう言って立ち去ろうとするので、俺は立ち上がりながら呼び止めた。


「待て!」


「ん、仲間になる気になった?」


「いや、お前の仲間になる気はない」


「じゃあ何?」


「お前の名前は?」


俺の問いにそいつはしばし考え込んだ後、


「僕の現実での名前なんかに意味はない。ま、強いて言うなら¨こいつ¨みたいに¨断罪¨とでと呼んでよ。ふふ、厨二病くさいかな?」


そう言って今度こそ立ち去った。


するとあいつらによって維持されていた空間が綻び始める。


そして目の前の風景が歪み、俺の精神は目を覚ました。



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