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百七拾九

7月2日(月)16時50分


都内某所


「…来た」


俺は30分近く背を預けていたフェンスから離れ、建物から出て来た人物の後をつけ始めた。


対象は離れた位置を歩く俺の存在に気づいた様子はない。


一応地味な服装でさらにマスクをしているため、遠目にはばれることはない(と思いたい)。


別にばれたところで誤魔化せるだろうけど、変に勘ぐられても後々面倒だ。


一定の距離を保ちつつ(近過ぎず遠過ぎず)、自然な足取りで後を追っていく。


端から見たら何をやってるのか疑問に思うだろう。


見る人によっては即刻変態扱いしてきそうだ。


何せ俺は下手な変装をして¨実の妹を¨尾行しているのだから。


話は朝まで遡る。


7月2日(月)7時30分


事件からちょうど一週間経った。


犯人(村正の所有者)は警察に身柄を拘束されるも自殺。


最初ニュースで見たときは呆然としたものだ。


事件はこうして幕を閉じた。


死亡したのは犯人である生徒一人だけということもあり、壊された備品や付着していた血痕の片付けが一段落した時点で学校が再開したわけだ。


といっても数日の内は午前中のみで、今日のところは全校集会だけ。


ちなみに入院中だったりカウンセリングの必要性ありと判断された生徒は一応一週間の間は欠席扱いにはならないらしい。


とはいえ一応無傷だし、勉強が遅れるのは面倒なので俺は休まずに登校する。


…でもまあ正直休んでもよかったか、なんて思うけど。


 6月26日(火)9時30分


無駄に長い全校集会がやっと終わり、やっと教室に戻ってくることができた。


重傷のつねやぎやまは学校に来ていないため、現状の相談をできる知り合いがいない。


舞霞は事件のせいで転入が伸びるらしいし。


「ふぅ…(かさっ)…ん?」


何の気なしに机の中に手を入れてみると指先に紙の感触が。


プリント類は溜めないようにしているし、たいがいの教科書はロッカーに仕舞っているので机の中には倫理の教科書くらいしか入ってないはず…


「…手紙?」


机の中に入っていたのは一通の封筒だった。


封はされておらず、まっさらな紙には宛先も差出人の名前も記されていない。


ラブレター…といった見た目ではないな。


中には三つ折りにされた一枚のレポート用紙。


そこには…



[10時に駐輪場  ¨神を堕とす者¨]


「…!!」


俺の視線はレポート用紙の右下に書かれた¨神を堕とす者¨という署名、走り書きに吸い寄せられた。


 6月26日(火)9時55分


指定されていた時間まで後五分。


辺りには帰宅する生徒が多数存在するため、一見して誰があの手紙の送り主かは分からない。


一応どの駐輪場かまでは書かれていなかったので、とりあえず一番身近な2ハウスの駐輪場の端で待つ。


10時まで後一分。


辺りにはまだ結構な生徒がいる。


今日は部活がないからそれだけ…


「…え?」


思わず声が出た。


いつの間にか俺を囲むように10人以上の生徒がただずんでいる。


全員無表情。ただ無言でこちらを、俺を見ている。


「なにを…」


そこまで言った瞬間、後頭部に刺激を感じた。


そして振り返る間もなく俺の視界は暗転する。


この時ふと思ったのが、きっと¨欠片¨さえ使えれば背後から近づいてくる気配に気づくことができただろうなということだった。

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