百七拾二
6月25日(月)?時??分
『…小僧!小僧!目を覚ませ!』
鬼丸の声が聞こえる。
『早く目を覚ませ!村正がくるぞ!』
俺の意識はゆっくりと覚醒し、同時に違和感を感じた。
「鬼丸…?」
刺されたはずなのに全く痛みがない。
もしかしてここは夢か天国…
『さっさと起きろ!』
ゴンッ!
「うごっ!?」
頭に衝撃が走り、思わず起き上がる。
見渡すと俺の足元には¨鬼丸¨が転がっていた。
ここはさっきまでいた所から動いていないみたいだ。
『起きたならさっさとそこの男を担いでさっさと逃げろ。今は離れた位置にいるが、だんだん近づいてきてるぞ』
「え?」
俺のすぐ近くにはつねがうつぶせの状態で倒れていた。
「つね!」
俺は意識のないつねを揺り動かしてみる。
「…う~ん、ムニャムニャ…もう死んでるよ~」
ダメだ。なんかもうダメな気配だ。
『とりあえず殴って無理やり起こせ』
ええいままよ!
ゴンッ
「……。」
あれ、反応がない。
ゴンッゴンッゴンッ
「……。」
全く反応がないな。
早く起こさないと…
ゴンゴンゴンゴンゴンゴン!
『ま、待て小僧!それ以上はさすがに死ぬぞ!』
「…え?」
見るとつねは口から泡を吹いていた。
やべっ
辺りを見渡し目撃者の有無を確認する。
よかった、誰もいない。
「うぐおっ!?何故か全身が殴打されたように痛いぜ(泣)っとあれ?どこここまさか異世界ってか阿部ちゃんじゃんヤッホー!」
なんかつねが寝起きのテンションでおかしくなってる!
口から血反吐吐いてるんですけど!怖っ!
「あれ?この感覚…もしかして【無制限共有フィールド】?」
「え?」
そういえばなんとなく違和感はある気がする。
てか鬼丸が具現化してるし。
でも触って確かめたが仮面はつけてないな。
「ここが【無制限共有フィールド】だとしたら素顔はまずいなー(‐ω‐)ほいなー」
つねはそう言って何もない空間からおかめのお面を取り出した。
「それにしても¨呪い¨のせいでここには来れないはずなんだけどなー?あ、村正ちゃんに強制的に連れてこられたからか。¨欠片¨とかが使えるようになってるのは【無制限共有フィールド】だからか。納得納得(・д・)」
つねは出現させたトンファーをブンブン振り回しながらテンション高く呟いている。
俺もウルトラマンのお面を取り出して装着し、改めて辺りを見渡した。
人の気配は一応ある。
しかし全生徒がこちらに連れてこられたわけではないようだ。
「お、この気配はぎやまかな?こっちに近づいてくる。てかいくつか知ってる気配ばっかだなー。村正ちゃん、もしかして参戦者だけこっちに連れてきてるのかね(‐ω‐)」
そうこう言っているうちに3ハウスの前をぎやまが走っていった。
「おーい、ぎやま!」
「阿部君?」
ぎやまはすでにプーさんのお面をつけていた。
「なんか運がいいな。真っ先にこの三人が集まるなんて」
「いや、運じゃないよ阿部君」
ぎやまはそう言って4ハウスのほうを指差した。
見ると転々と血溜まりが見えた。
「見た限り、残ってるのはオレらだけっぽい」
その直後4ハウスの方から人影が歩いてくるのが見えた。
同時に俺たち三人の動きが止まる。
「……。」
無言でこちらに向かってきたその男子生徒は般若のお面をつけていて、
「まじかよ…」
血にまみれた日本刀、返り血に染まったワイシャツを着ていた。
「……。」
6月25日(月)?時??分