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百六拾九

土日の間に通り魔事件が起こらなかったため、(正確には発覚しなかっただけかもしれないが)学校は普通に始まった。


しかし考えてみればそれは当然のことだったのかもしれない。


通り魔事件の被害者は皆稲穂学園に通っている生徒。


事件のせいで休校となり、部活もなかった学校に通う生徒なんていない。


¨鬼¨は、村正は待っていたんだ。


狩りの獲物が一ヶ所に集まるのを。


6月25日(月)8時24分


「ぎやま!」


教室の入り口から外に目を向けると、ぎやまが階段を上りきり、こちらに向かって歩いてくるのが見えた。


俺は思わず大きな声でぎやまのことを呼んでしまう。


それはしばらくぶりに学校に顔を出したぎやまに対して、でもあり


「阿部君」


その横を歩く女子生徒に対してでもあった。


なんとぎやまは女子生徒と手を繋ぎながら歩いてきていたのだ!


「ぎ、ぎやま…その子、誰?」


俺とくらいの身長でスタイルはモデル並み、顔も稲穂学園の中でもトップクラス、いやこんなに綺麗な子見たことない。


そんな子がなんでぎやまと手を繋いで登校してきてるんだ?


「初めまして…になるのかな、一応」


長い髪をポニテにまとめた活発そうなその子は俺の目をまっすぐ見てにこりと笑った。


「霧島舞霞です。改めてよろしく!」


6月25日(月)8時40分


教室はにわかに、というかだいぶざわついていた。


その対象は久しぶりに登校してきたぎやまに、ではない。


先生と一緒に教卓に並ぶモデル並みの美人、舞霞に対してだ。


「どうも、霧島舞霞です。今日は一足先に、稲穂学園に体験入学に来ました」


「あ~、急に親の転勤がこっちに決まったらしくてな。まだ引っ越しの準備やら何やらは終わってないらしいんだが、あちらの学校が休みなのを利用して見学に来たんだ」


「実際に転入してくるのは来週になります。少し早いですが、よろしくお願いします」


途端に上がる歓声と質問の嵐。


クラスの騒がしい奴らなんてお祭り騒ぎだ。


まあかくいう俺はいまだに驚きから覚めきらない。


ぎやまの過去については聞いていたが、まさか【多節棍】の舞霞のオリジナルが転向してくるだなんて。


それにあの舞霞は記憶を失っているはずじゃ?


ぎやまが何かしたのか?


昼休み、俺たちは昼食を済ませると男女に囲まれていた舞霞を連れて芸術棟に来た。


6月25日(月)1時03分


昼休みの芸術棟には比較的人がいない。


念のため三階の一番奥の最も人が来ない位置まで移動しておく。


「それで、ぎやま。どういうことか説明してくれる?」


ちなみにこの場につねの姿はない。


SHRもギリギリに顔を出していたし、終わったらすぐに姿を消してしまった。


「なんて言ったらいいのかな~。まずオレが土曜日に前の学校に行って、舞霞に会ったんだけど…」


俺は土曜日にあったことをぎやまの口から説明された。


その間舞霞はもの珍しそうに芸術棟の中を見て回っていたが。


「…で、宮崎君が」


6月23日(土)14時04分


「一つ、賭けをしようじゃないか、ぎやま」


そう言って宮崎はぎやまが走ってきた道を逆に進んで行った。


「宮崎君!」


杉山はどんどん進んで行ってしまう宮崎を追いかける。


杉山が振り向くとレオンハートがバイクに跨り走り去るところだった。




「どうもー、君が霧島さんだね?僕は宮崎と言います。杉山君の友達ね」


宮崎は普段の女性嫌いはどうしたと突っ込まれそうなほど自然に舞霞に話しかけていた。


「ちょ、宮崎君!」


口調から一人称まで全く普段と違う宮崎の様子に呆気に取られる杉山。


「えっと…杉山君、どういうことかな?」


舞霞は状況が呑み込めないのか¨顔見知りの¨杉山に疑問を投げかけている。


「いきなりだけどぎやまのためにちょっと思い出してもらうよー(笑)」


そう言って宮崎は杉山の右手を掴み、反対の手を舞霞の額に当てた。


「きゃ!」

「宮崎君!?」

「《我夢と現の狭間にて神を堕とす者なり》」


突然の宮崎の行動に悲鳴を上げる舞霞と驚く杉山。


そして宮崎の唱えた言霊と同時に三人の意識は途切れた。


6月25日(月)1時15分


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