拾六
?月?日?時??分
「うわっ!!」
柄を掴んだ瞬間小学校の屋上だった景色が歪み、次の瞬間別の景色へと変貌していた。
そこはさっきまでとは違い木々に囲まれていた。離れた所にツリーハウスがあり、辺りを見渡すとここが山であることが分かった。
焚き火の跡や木のテーブル、薪木が置いてあるのを見てやっと高校に入学してすぐにクラス全員で行った遠足のことを思い出す。
見ると近くにある木の切り株にさっき掴んだはずの日本刀が刺さっていた。
俺は日本刀に向かって先ほどから気になっている疑問をぶつけてみた。
「さっきから何で景色がいきなり変わったりするんだ?」
日本刀は事も無げに答えた。
『そりゃここはお前の夢と記憶が融合してできた空間だからな。』
俺はその返答に少し混乱してしまった。夢と記憶が融合?なんのこっちゃ。
『ったくめんどくせえな。夢を見てる途中いきなり場面が切り替わったことがあるだろう。それと似たようなもんだ。』
?マークを浮かべている俺を見かねたのか説明してくれた。だがますます分からなくなった。
『まぁ俺はあまり説明が得意じゃないからな。追々理解できてくるだろう、生き残ることができればだが。』
「はぁ…。とりあえずここが夢の中のようなものだってのは分かった。ってかそもそも俺は毎日のように見てた夢についてもまだ理解したわけじゃないし、生き残ることができればって何だ?」
『まぁ待て。確かに順を追って説明してやるとはいったが、今回は確認だ。お前、この戦いに参加する意志はあるか?あるのなら俺の柄を握れ。』
俺は日本刀のいきなりの言葉にうんざりした。さっきから要領は得ないし、分からないことだらけだ。
「急になんだよ。さっきから全然分かんないことばっかで、さすがの俺も混乱ぎみなんだけど…」
『いいから答えろ。お前には叶えたい夢はあるか?もしくは神にはなりたいと思うか?あるのなら柄を握れ。この戦いの勝者には夢を叶える資格が与えられる。』
突然事務的な口調に変わった日本刀に警戒心を抱きながらも、俺は今の言葉を反芻していた。
「そりゃ夢くらいはあるけど…。別に神になりたくはないな。神になって特にやりたいこともないし。」
俺がそう言うと、日本刀はかすかに震えながら答えを促してきた。
『そうか。だが夢はあるんだな。じゃあ戦いに参加するか?別に参加しなくてもいいが、おそらくこの戦いで勝利することが夢への近道だと思うがな。』
「別に楽して夢を叶えたいわけじゃないけど…。まぁ戦いってのに興味はあるし、参加してみようかな。」
俺は深く考えず、日本刀の柄を握った。
瞬間。
世界が反転した。
5月12日0時09分