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百六拾七

6月23日(土)8時27分


「…あれ?」


気がつくと俺は床に倒れていた。


起き上がろうとすると関節の節々が悲鳴を上げ、頭はまるで鐘を鳴らしているかのようにガンガン鳴り響く。


頭を揺らさないよう慎重に辺りを見渡すと、ここは俺の部屋の入り口の前だということが分かった。


服装は昨日【無制限共有フィールド】に行ったときと同じ黒いジャージ。


寝床からだいぶ移動したな…


こんなに寝相が悪かったのは人生初かもしれない。


『起きたか、小僧』


「鬼丸?」


不意に鬼丸の声がして頭痛がする頭に衝撃が走る。


『さっさと支度をしろ。今日はフルで修行すると言ってあっただろう』


「えっと…」


まったく覚えてない。


昨晩のことを思い出してみようとするが、三日月が舞をしていたとこくらいまでしか思い出せなかった。


「…そういえば三日月は?」


肝心の内容がまったく思い出せないし、昨日俺は何をしたんだったか…


『三日月は日中に万が一にも直射日光を浴びないために、こちらと【無制限共有フィールド】の狭間にいると説明しただろうが』


いや、知らない。聞いた覚えがない。まったく思い出せない。


よく酒の飲み過ぎて記憶がなくなると聞くが、感覚としてはそれが一番近いかも。


俺はとりあえず顔を洗ってから軽い朝食を取り、少し経ってから横になる。


「よし、じゃあ──────」


俺はもっとよく考えてみるべきだった。


記憶が途切れているのは三日月に会ってすぐだった。


だとしたら俺の記憶がない原因は十中八九三日月にあるはず。


それに気づいたのは【無制限共有フィールド】で結界を張って待っていた三日月に出会い頭にフードを取られてからだった。




いつまでも目を覚まさない俺を心配した妹にボディプレスをかけられ、強制的に覚醒させられたのは10時間後の18時30分。


俺は改めて三日月と鬼丸のスパルタな修行を記憶に刻み込まれ、体感的に数ヶ月ぶりに会う妹に殺意を覚えた。


6月23日(土)13時19分


「…着いた」


朝から電車を乗り継いで数時間。


杉山はまだ暗いうちから出発し、とうとう前まで通っていた学校にたどり着いた。


最初は資金的な理由で新幹線などの移動手段を諦めたのだが、あまりに長い乗車時間に途中何度となく後悔したことだろう。


土曜日であることもあり、校舎はひっそりと静まり返っている。


この学校はキリスト系統の学校のため、土日は基本的に部活もない。


しかし学校の敷地内、校舎から少し離れた位置から歓声が響いてきている。


土日の練習はないが、どうやら今日はテニス部の試合があるらしい。


ちらほらと人影が歩いているのが杉山のいる位置からも確認できた。


数分ほど遠目にテニス部の方を眺めていた杉山だったが、ふとこちらにボールが転がってくるのが見えた。


「すいませーん!取ってもらえますかー?」


すぐにテニス部員と思しき女子生徒がボールを拾い上げた杉山に向かって小走りで走ってくる。


杉山は黄色いテニスの硬式の球を右手で持ち、下投げで放ろうと構え、


「あ、はーい。いきま…」


近づいてきたその女子生徒の顔に釘付けになった。


女子生徒は固まる杉山のすぐそばまで来ると手を差し出しながらお礼を言った。


「すいません、ありがとうございました!…?あの…」


ボールを渡さない杉山を不思議そうに眺め、その女子生徒は首を傾げた。


長い髪をポニーテールにまとめ、活発そうな雰囲気をしている。


背は杉山ほどでないが170cm近くあるだろうか。


スポーツで引き締まったバランスのとれた体には無駄がなく、抜群にスタイルがいい。


表情は生き生きとしていて、モデルでもしているのではないかと思うほど可愛らしい。


それでいて…


「えっと、すいません、ボールを…って、もしかして杉山君?」


それでいて相変わらず漫画やアニメのヒロインみたいな出会いをする。


杉山はかつての学校で霧島舞霞と再会した。


6月23日(土)13時48分



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