百六拾五
6月23日(土)?時??分
【勝者、ウルトラマン!】
俺は追い詰められながらもどうにか相手を倒すことができた。
これで三戦目が終わった。
いつもより重い体を引きずりつつ闘技場を後にする。
6月23日(土)?時??分
『見た感じだと、だいぶ【神器】に呑まれてる所有者が多いな』
「それはおそらく、村正も関係している、と思う」
『襲われた参戦者か?』
「タイミング的に、あながち的外れではない、と予想される」
『…過去に例がないわけじゃねえが、今回は例外も多いからな』
「確かに、こんなに長いのは初めて、かも。いつもならせいぜいひと月程度」
『長くて二カ月未満ってとこか。この流れだとそろそろのはずだが…』
「参加人数が多いのも関係してると、思う。でもやっぱり今回はイレギュラーが過ぎる」
『この【無制限共有フィールド】ってのもそうだ。…もしかしたら今回でけりをつける気なのかもしれねえ』
「…あり得る、かも?」
【無制限共有フィールド】の稲穂学園から移動すること15分。
こちらにある俺の家に侵入するやいなや三日月が待ち構えていた。
いや、あらかじめ呼ばれてはいたんだけど。
説明によるとこの【無制限共有フィールド】は現実と重なるように存在するので、同じ座標軸であればそこから行き来できるらしい。
本来精神のみでこちらに来ている俺たちは別の位置に移動して行き来できないが、¨現実¨に実体のない三日月はどこからでも行き来は可能だとか。
それはさておき、三日月は鬼丸と今日あったことの情報を交換をしている。
三日月は一応【無制限共有フィールド】を自由に移動できるらしいが、どうもカリヤを裏切ったせいであまりおおっぴらには無理なんだそうだ。
ちなみに聞いて知ったのだが、稲穂学園だけはカリヤの許可のないものは近づくことはおろか認識すらできないらしい。
すでにカリヤを裏切った三日月は稲穂学園に干渉することはできないと言っていた。
『¨村正¨のことはあいつもイレギュラーだと言ったんだな?』
「そう。私の担当じゃなかったけど」
『童子切の野郎がこれだけ手間取ってんだ、相当厄介なみたいだな』
「どうも¨村正¨は初期の能力の他に呪いで新たな力に目覚めた、としか」
『やつから逃げ回ってる時点でろくな力じゃねえだろうよ。ただでさえここじゃ制限の設定があやふやだってのに』
「確かに、ここでは他で通用する概念が¨無制限¨。なのにたった一つだけ制限が明確なものがある」
『なんだそれは?』
「これはカリヤ様直属の者と鬼丸殿以外の天下五剣しか知らされてないけど、じつは…」
いつまで三日月と鬼丸の話し合いは続くんだろう。
三日月がこちらで待っていたのは情報交換もあるが、他の目的もあったはずだ。
10分ほど経った頃、ようやく話し合いが終わったらしい。
「それじゃ、いったん屋根に上る」
「え?」
唐突にそう言われて何のことか分からない俺の目の前で、三日月は刀を抜く。
透き通っているかのように澄んだ刀身。
まるで水晶から直接打ち出したようだ。
何度見ても目を奪われ…
「…《月光閃》」
俺の部屋の天井に穴が空いた。
俺の目はその穴に釘付けだ。
「…うん」
三日月は満足げに刀を収めた。
「ちょ、ええぇぇぇ!!?」
待て待て待てい!!
何あっさり人の家破壊してくれてんだよ!
思いっきり空見えてんじゃん!
雨降ったらここだけセルフシャワーだよ!
「来て」
そう言い残して三日月は天井に空けた穴から飛び出していってしまった。
「え~…。どうすんだよこれ…」
どうしようもない。
仕方ないから俺も屋根に行くことにした。
もちろんベランダから。
6月23日(土)?時??分