百六拾二
6月22日(金)17時??分
「…とりあえず、二人とも合格?」
なんで疑問形?
俺とジミーは地面に大の字で倒れた状態でそう思ったが、呼吸がまったく整わず口には出せなかった。
強い…!
あまりに実力差がありすぎる…。
あれで一割だなんて、正直今の自分の実力がどれほどのものか思い知らされた。
ウル○ラマン化してローブの端に触れるのがやっとだなんて…。
「だいたい、分かった」
息一つ乱した様子もなく三日月は言った。
「鎖を使ってた彼と、斬馬刀を使っていた君は、【多節棍】に修行をつけてもらう」
それを聞いたジミーはまだ荒い息のまま三日月に質問した。
「舞霞…さんに?」
「そう。君たちは、たぶん同じ系統?」
だから何故疑問形…
「同じ系統…って何ですか?」
ジミーの質問に三日月は軽く首を傾けながら答えた。
「人に限らず、存在するあらゆる物には、いろんな可能性と、属性がある。例えば、……。まあいいや」
いやいや!気になるから言って下さい!
「おおざっぱに、分類して名前を付けるなら、私は光属性?」
光属性って…
「鬼丸殿の所有者も、同じ」
「え、俺…ですか?」
俺も光属性?
「と言うわけで、あなたは私が直接鍛える。…OK?」
「あ、はい」
どんな修行になるのかまったく予想できない…。
ともあれ、俺たちの修行はやっと本格的に始まった。
6月22日(金)17時??分
舞霞の¨夢¨の空間
とある閑静な住宅街を杉山とマグヌソンは全力で走っていた。
「ね、ねえ…ぎやま…!」
マグヌソンは息も絶え絶えになりながら、並列して走る杉山に声をかけた。
「な…なに…?」
同じく絶え絶えな杉山は比較的マグヌソンよりはましな様子だった。
「もしかして…舞霞…さんて…、ものすごい…スパルタ?」
「…うん」
こうしている間にも背後からはちょっとした特撮の怪獣並みに巨大化した多節棍が蛇のように追いかけてきていた。
『ほら無駄口叩いてないで走る!』
「「は、はい!」」
二人の命を懸けたマラソンはまだまだ終わらない。
6月22日(金)17時??分
三日月の¨夢¨の空間
俺は引き続き廃工場のゴーストタウンで三日月に稽古をつけてもらっていた。
ジミーは今頃ぎやまに説明して舞霞に鍛えられていることだろう。
「もっと¨光¨を一定に保つ。…そんなに揺らいでたら、効果が半減する」
言われて俺は改めて目の前に集中する。
鬼丸の全身を¨光¨が覆っている。俺の十八番¨光剣¨だ。
今は集中が乱れたせいで切っ先のあたりの¨光¨がぶれてしまっているが、今までに比べたらだいぶ落ち着いてきている。
「常に均等に無駄なく、それをキープできていれば、切れ味は格段に、増す、はず」
かれこれこの状態ですでに15分。そろそろ集中が切れるかもしれない。
剣術の修行なら毎日のようにやってきたが、¨光¨についてはこんな修行なんてしてこなかった。
「その状態で、最低一時間。じゃないと使い物にならない」
「は、はい」
今まで実戦でもあまり長時間キープしてこなかった¨光剣¨を意識してここまで集中させると、正直これだけで精一杯だ。
俺の額を汗が伝っていく。
三日月は淡々と言うせいで冷たく感じるが、この修行が始まってからは何かと分かりやすく実践して教えてくれている。
今までイメージや気合いだけで何とかしてきたことをちゃんと言葉にして伝えてくれるので、修行を始めてから今の段階で自覚できるほど感覚が変わった。
スポーツでいう正しいフォームを教わったようなものだ。
剣術は鬼丸と共同で教えてくれるらしいし、今は¨光¨をマスターすることに集中しよう。
6月22日(金)17時??分