百五拾九
6月22日(金)?時??分
今日の試合もなんとか三勝して、すでに体は回復していたけれど、頭の中は問題ばかりでオーバーヒート寸前だ。
いまいちまとまりが悪く集中力もない。
そのせいで何度か手痛いミスを連発してしまった。
起きたときの幻痛を思うと今から気が重い。
だが目覚める前にやるべきことがある。
俺は目の前の扉を開き、すでにそこで待っていた人物と顔を合わせた。
その人物は本来ここにいる資格がない。
すでにリタイアしているし、¨現実¨では記憶を失っている。
だが若干他とはイレギュラーな立ち位置にいるため、間接的にこちら側に干渉することができる。
扉を閉めて俺は手近な机に腰掛けた。
後この場に揃っていないのはぎやまとつね。
片方は来れないのがすでに分かっている。
残る片方が来るまで、俺は窓際の席に座っている生徒と話すことにした。
「それで、つねの命に別状はないんだよね?ジミー」
6月21日(木)18時??分
突如光に包まれたつねは徐々に姿を変え、ついにはまったく異なった容貌へと変化した。
「え、ジミー?」
なんとつねが座っていた場所には同じ体勢でジミーが座っていた。
「やあ」
ジミーが片手を上げる。
若干気まずくそうな表情をしているが…
「失敗失敗っと。さすがにぶっつけ本番でやってみても失敗するわな」
そう言って立ち上がる。
「えっと…どういうこと?」
ぎやまも俺同様に混乱しているようだ。何故つねがいきなりジミーに?
「あー、説明すると長くなるんだけど…とりあえず先に要点だけ話すよ」
ジミーは質問しようとした俺たちを手で制し、軽く咳払いする。
「つねが¨鬼¨に襲われたのは聞いたよね?それに追記する形になるんだけど、」
俺たちが頷くと、ジミーは決まり悪そうにこう言った。
「今つねは意識不明の状態で病院にいる」
唖然とする俺たちを残して、ジミーは唐突に姿を消した。
6月22日(金)10時36分
S市某病院
すでに病院内は見舞いや検査の人でざわついている。
しかし113号室はそういった喧騒とは無縁だった。
集団部屋ではあるものの、部屋のベットは一つしかうまっていない。
窓際のベットに静かに横たわる青年。
むき出しの腕には点滴のチューブがつながり、心拍数を表すモニターには一定の波が表示されている。
突然病室のドアが開き、二人の男女が入ってきた。
年の頃は青年と同じほど。
三人に増えた病室を沈黙が支配し、すぐにその静寂は破られた。
「つね、連れてきたよ」
いつの間にか病室には一人増えていた。
ベットに横になっている青年を含めた三人とは異なり、唐突に現れた青年は日本人離れした容貌をしていた。
「…宮崎が入院したってのは本当だったんだ」
病室に入ってきた片割れの女子校生がそう呟く。
「……。」
もう片方の男子校生は無言でベットに近づき、青年の顔をじっと見つめる。
「そんなに見つめないでよ、照れる」
病室にまた一人唐突に現れた。
「つね」「みやちゃん」
ベットに横たわる青年とまったく同じ姿の青年がベットの脇に腰掛けていた。
驚きを隠せない二人に青年は苦笑いを浮かべ、説明をしようと口を開きかける。
すると、
「……。(ドッ)」
「ホアチャー!(ガスッ)」
「うげへはっ!?」
男子校生は無言でモデルガンを発砲し、女子校生はかけ声とともに回し蹴りをかました。
それをまともに食らった青年はベットの下に転げ落ち、二人はそれを冷めた目で見下ろしている。
「…何やってるんだ」
「心配させるな!」
二人の背後ではもう一人の青年、ジミーが苦笑いでそれを見ていた。
6月22日(金)13時25分