百五拾六
6月21日(木)6時50分
今日は稲穂学園全体が休校になった。
昨日の通り魔事件が原因らしい。
連絡網で回ってきた内容によると、今日1日と明日の金曜日は休校、実質4日間の休みになるそうだ。
曲がりなりにも、名ばかりでも一応進学校のため、外出を控えるのはもちろん自宅学習は欠かさないよう伝達された。
だがそう言われても自宅に籠もってばかりいられない。
昨日のぎやまの様子から多分もう大丈夫だとは思うが、それでも実際に¨現実¨で会って話す必要がありそうだ。
6月21日(木)14時30分
といっても俺たちが共通で集まれる場所なんて学校とかそこら辺だった。
学校の近くにある店のフードコートに集まってもいいが、さすがに人目のある場では話しづらい。
結局ぎやまとついでにつねには家に来てもらうことになった。
6月21日(木)16時15分
「お邪魔しました」
「行ってきまーす」
「いやいや、ここ俺の家だから!」
結構シリアスな話し合いだったような気もするが、終わってしまえばつねはあくまでマイペースだった。
しかし今はそのマイペースさがこの場の空気を軽いものにしてくれる。
¨現実¨でのぎやまはとても笑っていられるような状態じゃなかったから…
あの試練の日からほぼ毎日半日以上【無制限共有フィールド】でカリヤの探索と破壊活動を繰り返していたぎやまは、栄養失調などで酷い有り様だった。
昨日も結局ずっと【無制限共有フィールド】にいたため¨現実¨での時間が分からなくなり、結果的に学校をサボってしまったらしい。
一応は剃ってきたんだろうが、剃り残した無精髭と痩せこけた頬、充血した目が病的な印象を与える。
つね曰わく、「うわー、ヒッキー(引きこもり)か自宅警備の人みたい(笑)」だそうだ。
…こいつには友達を心配するって感情がないのだろうか。
正直家に集合じゃなくて、直接ぎやまの家に行けば良かったかなとも思う。
しかしぎやまの家の位置が分からなかったため、家に集合になってしまった。
6月21日(木)16時16分
「それじゃ6時にまた」
「三日月さんによろしくねー(笑)」
すでに三日月が仲間になったことは伝えてある。
三日月に殺されたぎやまは若干複雑そうだったが…。
話し合いの結果、俺たちは改めて三日月を含めた【神器】達に稽古をつけてもらうことになった。
「ああ。そだ、通り魔には気をつけて」
昨晩の童子切との遭遇がぎやまに自らの力不足を体感させたからだ。
ぎやまの実力は復讐心と精神の疲労からだいぶ鈍ってしまっていた。
「うん」
ぎやまは疲れきった表情で頷いた。
ずっと【無制限共有フィールド】に籠もっていたぎやまは先ほど初めて通り魔事件について知った。
その通り魔の犯人が¨神を堕とす者¨の参戦者であることも。
しかしカリヤにしか執着していないぎやまにはあまり興味のない情報だったようだ。
ぎやまは以前と別人のように変わってしまった。
だがこの闘いが終われば自ずと元のぎやまに戻ってくれるだろう。
「大丈夫(‐ω‐)少なくともぎやまをシャトルに乗せるまではおれが警護しとるからねー(笑)」
無表情にふざけた口調でそう言っているが、つねの実力なら多分大丈夫だ。
俺は曲がり角まで二人を見送ってから家に引き返した。
とりあえず6時になるまで課題でもやっていよう。
つねが通り魔に襲われたと知ったのは、【無制限共有フィールド】の2Lに到着してからだった。
6月21日(木)18時??分