百五拾四
6月21日(木)?時??分
¨断獣¨の群れの中心に降り立った安綱は、複数の¨断獣¨を相手取る杉山の背後に立った。
無数に伸ばされた鎖を無造作に掴み取る。
「なっ!!?」
驚く杉山に安綱は不機嫌そうに言った。
「お前、参戦者だな?面倒事を増やすな。お前達の保護も仕事に組み込まれてるんでな…」
そして状況を理解できていない杉山から取った、鎖の伸びた多節棍を振るう。
「「「グギャア!!」」」
すると鎖に巻きつかれていた¨断獣¨が一斉に安綱に引き寄せられ…
「…黙れ下等生物どもが」
一瞬で殲滅された。
「!…!?」
驚くことしかできない杉山を見据えると安綱は
「ほらよ」
ひょいと多節棍を投げて返した。
「ガキじゃねえんだ。一人で帰れるな?」
その圧倒的な力に、思わず頷いていた。
「は、はい…」
すると安綱は周りで待機していた部下達に声をかけた。
「お前らは引き続き¨鬼¨の捜索だ!まだこの周辺にいるはず、草の根分けてでも探し出せ!」
「「「押忍!!」」」
虎武羅の組員達は瞬時に編成を組んで音もなく去って行った。
すでにその一瞬で安綱は移動し、姿を消した。
後には杉山だけが残される。
杉山はしばらくその場から動くことができなかった。
6月21日(木)?時??分
安綱たちが立ち去るのを確認し、今度こそぎやまのほうに駆け寄ろうとすると、
「……(‐ω‐)」
再びつねが無言で俺の肩を掴んだ。
何事かと振り向く俺につねはぎやまを指差した。
「…?」
ぎやまはしばらくの間微動だにしなかったが、突然怒声とともに拳を振り上げると、アスファルトの地面に叩きつけた。
その鈍い破壊音は離れた位置にいる俺たちにまで聞こえてきたので、相当な力を込めて殴ったらしい。
見ると陥没した地面から上げられた拳からはポタポタと血が垂れている。
そして遠目に分かるほど震えていた。
それは怒りからなのか、もどかしさからなのか…。
俺はその様子に躊躇したが、ぎやまに向かって駆け出した。
さすがに今度こそつねは引き止めなかった。
6月21日(木)?時??分
「ぎやま!」
「……。」
駆け寄る俺にぎやまは何の反応も返してこなかった。
だが見ると舞霞(多節棍)が勝手に動いている。
おそらく契約者にのみ聞こえる声で慰めているのだろう。
俺はなんとなく気まずくなったが、ぎやまが落ち着くまで待った。
それまで少し離れた位置で他の¨断獣¨が来ないか見ていることにした。
6月21日(木)?時??分